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新人魔女と憧れのあの人(3)

 リッカは苦笑しながらフェンの頭をそっと撫でた。突然撫でられて驚いたフェンだったが、すぐに気持ちよさそうな顔になった。しばらくするとハッとした様子になり、慌てたように話し始めた。


「ああ、それから、もし魔熊の体液があれば、それは明日にでも工房へ持ってくるように、とのことです!」


 フェンの言葉にリッカは一瞬動きを止める。魔獣の体液は、薬の材料となる貴重な素材の一つだ。すぐに品質状態の悪くなってしまう魔獣の血や体液は高級素材として扱われ、なかなか手に入りにくい。だから、自身で魔獣を狩るときはなるべく体液を採取できる状態で倒すべきなのだ。しかし、リッカが今持っている素材の中に魔熊の血や体液はない。


「体液か……」


 リッカはポツリと呟きながら、辺りを見回した。先程倒した魔熊のかけらは肉片ばかり。リッカは困り果てた顔をしてフェンを見る。フェンもどうしたらいいのかわからないといった感じに、耳が垂れている。


 二人はしばらく黙り込み、どこかに体液が付着していないかと探してみるが見つからない。諦めかけたリッカが、ふとフェンを見る。視線がある一点に注がれていることに気がつき、リッカはそちらに目をやった。


 そこには拳ほどの大きさの赤い石が転がっていた。よく見ると、その石は微かに光を放っている。


 リッカは屈んで石を拾い上げると、まじまじと見つめる。フェンはリッカの手の中をしきりに嗅いでいる。


「リッカ様。微かに血の匂いがします」

「うん。たぶんこれは魔熊の魔石なんだと思う」

「魔石……ですか?」

「そう。私も現物を手に入れたのは初めてだけど。魔獣の魔力量を上回る大きな力で倒したとき、魔獣は魔石になると本で読んだことがあるわ」


 魔獣は体内に魔石を持つ。それは魔獣の心臓であり、魔獣の核である。魔獣の体力を徐々に削って倒す場合は、戦っている間に核が溶けて体液となるが、大きな力で一瞬で倒してしまった時には、核が溶け切らず魔石として残るのだという。


 魔力が込められた魔石はものすごい高値で取引される。そもそも希少性が高いためもあるが、薬の素材になったり、魔術の媒体として使ったり、また、魔道具を作る際のエネルギー源として使ったりと、様々な用途で用いることができるからだ。


 リッカは、肩から下げているお手製の魔術を施した鞄に手を突っ込むと中を漁った。そして、指先に固いものが当たる感触に、目当てのものを見つけたことを知る。


「あった……!」

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