新人魔女に新たな依頼(5)
「分かった。それは、しっかりと守るようにするよ。ところで、この水晶の力は何日くらい持つんだい? 作業中に魔力切れなんてことになったら困るんだけど」
ラウルの問いにリッカはにっこりと微笑んだ。
「毎日二体を出して数時間使うとして、大体一か月くらいは一つの水晶で足りると思います。そこは生活用魔石と同じだと思ってもらえれば大丈夫です。現在の色が無色になってきたら魔力充填が必要です。あ、コレ替えの水晶です」
そう言ってリッカは鞄から黄色の水晶を取り出した。ラウルはリッカからそれを受け取り、セバンを生み出す魔法陣の側に置いた。
「魔力充填が必要になったらご連絡ください。すぐに次の水晶をお持ちしますので」
リッカの言葉にラウルは礼を言った。リッカとラウルがそんな話をしていると、店の方からセバンが二体やってきた。
「やぁ。店の片づけと掃除は終わったのかい?」
ラウルの問いかけに二体の白いセバンが揃ってコクリと頷いた。
「そうか。じゃあ、次はコレを冷ましてくれるかい?」
ラウルはそう言うと、大きな鍋に入れられたカスタードクリームを指さした。セバンたちが頷いたのを確認してから、ラウルは二体を台の上にあげると、それぞれに団扇を持たせた。
「優しく頼むね」
ラウルの指示に二体のセバンは了解したと言わんばかりに、団扇を持ち上げてから、ふわりふわりと扇ぎ始めた。その様子を見ていたリッカはハッとした。
「そうか。団扇だ!」
リッカの言葉にラウルは首を傾げる。
「どうしたんだい?」
「あ、いえ。わたしの工房でもこの子たちを使っているんですけど、どうやったらセバンたちでも工房内で風を起こせるかなってずっと考えていて。そっか。団扇ですよね。道具を使えばいいんだ。魔法を使うことばかり考えてしまって全然思いつかなかったです。さすがです。ラウルさん」
「魔法が使えない僕たちにとっては、道具を使うことは当たり前のことなんだけどね」
リッカの言葉に、ラウルは苦笑いをする。ラウルの最もな言い分にリッカもつられて苦笑いを浮かべた。それから話題を変えるように、リッカはラウルに問いかけた。
「そう言えば、氷精花の方はどうですか?」
その問いかけに、ラウルは店内にある業務用の冷凍庫へ視線を向ける。
「預かった容器のまま、冷凍庫で保管しているよ」
「もう少し在庫をおいていきましょうか?」
「とりあえずは、今ある分で大丈夫だよ」
リッカの申し出に、ラウルは緩く首を振る。