新人魔女に新たな依頼(4)
「早速、今朝から手伝ってもらっているけど、この子たちは随分と働き者だね。ゴーレムって聞いたときはどうなることかと少し心配もしたけど、全然問題なしだ」
ラウルは嬉しそうにセバンたちの働きぶりを褒める。リッカもそれに同意するように頷いた。
「この子たちのおかげで、接客が随分と楽になったし、厨房の方にも専念できたよ。それにね」
ラウルがリッカに意味ありげな視線を向ける。リッカは何だろうと首を傾げた。
「どうかしました?」
「この子たち、随分と愛想がいいのかお客さんたちに大人気でさ。この子たち見たさにやって来たお客さんもいるほどなんだよ」
ラウルの話にリッカも「確かに」と頷いた。セバンたちは愛想が良いので、接客係としては最適だ。
「ラウルさんの人気が脅かされちゃいますね」
リッカの冗談めかした言葉にラウルは照れたように頭を掻いた。
「いやぁ、それは……。俺もこの子たちみたいに愛想良くしないとなぁ」
「ラウルさんの愛想は充分だと思いますよ」
リッカの返事にラウルは苦笑する。
「ところでリッカちゃん。この子たちは魔法陣の水晶を解除すると、元に戻るんだよね」
ラウルの問いにリッカは頷く。
「ええ。水晶の解除か、魔力切れでこの子たちは元の小麦粉の塊に戻ります。あ、もしかして継続的に同じ個体を使いたいということですか?」
リッカの問いにラウルは少し考えた後、首を横に振った。
「いや、それは大丈夫。そういうことじゃなくて……その……この子たちはしっかりと指示にも従うから、然程心配はしていないのだけど……」
そこで、ラウルは言いにくそうに言葉を切った。リッカはラウルが何を言いたいのか分からず、首を傾げる。すると、ラウルは少し躊躇った後に口を開いた。
「ほら、厨房にはいろいろな物があるだろう。だから、万が一僕がいない間に何かあったらとちょっと心配でさ」
ラウルはそれだけ言うと、どう説明したものかと言葉を探しているようだ。
リッカはラウルの言いたいことを理解した。確かにこの厨房には仕入れ済みの材料が所狭しと積み上げられているし、火を使うオーブンもある。不慮の事故を心配するのも分かる。
「ああ。なるほど。セバンたちがいたずらをする心配はありませんよ。ですが、ご心配なら、業務後はお手間ではありますが、やはり水晶の解除をする方がいいでしょう。水晶に魔力があるうちは、セバンの維持がされてしまいますので」
リッカの説明にラウルは真剣な顔で頷く。