新人魔女に新たな依頼(1)
新人魔女のリッカは、本日も作業場でセバンたちの作業状況を確認中だ。
リッカはこれまで、土人形であるセバンを必要なときのみ魔力で生み出し補助的作業要員として使っていた。しかし昨日、師であるリゼからセバンたちの体を維持すれば常用的に助手として使うことができるのではないかと提案され、早速実践することにしたのだ。
リッカが工房へ行くと、既にセバンたちは昨日決めた各持ち場で作業をしていた。
「みんな集まって」
リッカが声をかけると、作業の手を止めたセバンたちがわらわらと集まってきた。全部で六体のセバンがリッカの足下に整列する。
「ご苦労さま。みんな、調子はどう?」
リッカはセバンたちに労いの言葉をかける。それに答えるかのようにセバンたちは元気に飛び跳ねた。その様子を見るに問題はなさそうだと思いながらも、一応念のためとリッカはセバンたちを一体ずつ確認する。
セバンたちの胸の辺りには、赤い小さな石が嵌め込まれている。それが外れていないか、外れそうではないかを確認し、リッカは満足そうに頷いた。昨日、セバンたちの胸に魔熊から採取した魔石を砕いた物を魔核として嵌め込んだのだ。
リゼ曰く、魔核を得たことでセバンたちは土人形でありながらも一個体としての意識を強めた存在になったらしい。今はまだそれぞれの個体を見極めることは難しいが、魔核の定着と共に、いずれ各々の個性も芽生えてくるだろうとのことだ。
リッカはセバンたちに改めて向き直ると、仕事の報告を促す。すると、セバンたちは我先にと元気よく手を挙げ飛び跳ねる。
「それじゃあ、まず虹の雫からね」
リッカがそう言うと、セバンたちの動きが止まり、虹の雫担当と思われる二体が前に出る。
「今日も少しは採取できた?」
リッカの問いにセバンたちがコクリと首を縦に振る。
「氷精花にかける分もあったかしら?」
再びセバンたちはコクリと首を縦に振る。
「それは良かったわ。ありがとう」
リッカが虹の雫担当を労う。すると、薬草担当と氷精花担当と思われるセバンたちがまた競うように手を挙げた。
「じゃあ、薬草の方から。昨日採取した分の天日干しは完了した?」
薬草担当らしきセバンたちがコクリと首を縦に振る。
「そう、ありがとう。乾燥の方も順調かな?」
リッカの問いにセバンたちは何かを言いたそうに体をもじもじとさせている。どうやらあまり良い報告ではないようだ。
「何かあるの?」
リッカは薬草が干してある場所へ向かった。