新人魔女の小さな助手(7)
「どう? 順調?」
リッカの問いかけに、セバンは首を傾げる。その様子をみてリッカは作業台へと視線を向けた。作業台には先ほど採取してきた素材が並べられているが、思ったほど作業は進んでいないようだ。
「もう少し手が必要かしら」
リッカのつぶやきに天日干し係のセバンがブンブンと首を縦に振る。
「分かったわ。後でもう一体出しましょう」
リッカの判断にセバンが両手を上げて喜びを表す。そんなセバンを微笑ましい気持ちで眺めながら、リッカは最後に残ったセバンを見やる。
「最後は氷精花だけど、担当はあなたと、この子ね?」
最後に残った一体が前に進み出る。もう一体はリゼの手の中だ。相変わらずジタバタと手足を動かしリゼの手の中から脱出しようと頑張っているが、リゼは興味深そうにセバンを観察しており、頑として離さない。リッカは呆れたようにため息を吐くと足下にいるセバンに問いかけた。
「氷精花に何か変化はあったかしら?」
リッカの呼びかけにセバンは首を横に振る。しかし、リゼの手の中の個体が、バタバタと身振り手振りで何かを伝えようとしている。その様子にリゼもさすがに気付いたようだ。リゼがようやく手を離すと、その個体はリゼの元から離れるように一目散に駆け出し、随分と距離を取ったところでぴょんぴょんと飛び跳ねた。
リッカがその個体を見て苦笑いを浮かべていると、もう一体の氷精花担当のセバンも後を追っていき、二体並んで飛び跳ねる。
その様子にどうしたのだろうかとリッカは首を傾げた。よく見れば、セバンたちが飛び跳ねている場所は、氷精花の株が植えてある畑の側だ。リッカはセバンたちに近付いて畑を観察した。
「どうしたの? あれ?」
「どうした?」
リッカの後をついてきたリゼが問いかける。
「えっと、この畑に少し前に水をやったんですけど、すっかり乾いてしまっているんです」
リッカは不思議そうに畑を眺める。リゼも同じように畑を観察する。
「水はけが良すぎるのだろうか?」
「……そうなのでしょうか? でも、早すぎる気がします」
セバンたちはようやく跳ねるのを止めて、リッカの元へ戻ってくると、コクコクと頷いている。どうやら、地面が乾燥していることをリッカに伝えたかったようだ。
「あなたたち、ここに水を撒いてくれる? 他の子たちも水撒きを手伝ってあげて」
リッカの指示で、セバンたちはわらわらと水汲みにかけていく。その様子をジッと見ていたリゼが、徐にリッカに声をかけた。