新人魔女の小さな助手(6)
弟子にきっぱりと言い切られ、リゼは押し黙る。
「だから、ゴーレムたちは必要なんですよ」
リッカは自信満々に胸を張った。そんな弟子の様子に師であるリゼは深いため息を吐くと、諦めたように頷いたのだった。
「分かった。だが、せめてその呼び名は変えた方が良い」
「呼び名ですか?」
きょとんとした顔のリッカにリゼは諭すように伝える。
「ゴーレムという名は一般的には巨大土人形のことを指す。アレをゴーレムと呼ぶと紛らわしい」
「そうですか? まぁ、いいですけど。それじゃあ、なんて呼びましょうか?」
「……チビでいいんじゃないか」
リゼの言葉にリッカはやれやれといった様子で首を横に振った。
「そんなのダメですよ。可愛くないじゃないですか!」
「そんなことは知らん。ダメだと言うのならば、君がさっさと決めろ」
リゼにピシャリと言い切られ、リッカはしばし考え込んだ。そして、何か閃いたようにポンと手を打つ。
「……では『セバン』というのはどうでしょうか? 呪文の一部からとりました」
リッカは口の中で小さく「セバン」と繰り返し唱え、やがて納得の笑みを浮かべた。
「うん。かわいい! リゼさん、どうですか?」
「……まぁ、いいんじゃないのか」
「じゃあ、決定です! あの子たちのことはこれから『セバン』と呼びます」
リッカは嬉しそうに宣言すると、作業場内で作業をしているゴーレム改めセバンたちを呼び集める。セバンたちがわらわらと集まってきて、リッカの足下に整列した。
その中でやけにリゼから距離を取りたがる一体が目に入る。先ほどリゼに捕まり小突かれていた個体なのかもしれない。そのおどおどとした仕草が逆にリゼの目を引いたのか、その個体はまたもリゼに捕まってしまった。リゼに掴まれた個体は、ジタバタと手足を動かして暴れている。
「リゼさん、また苛めたりしないでくださいよ?」
リッカの言葉にリゼはフンと鼻を鳴らす。そんな師匠の様子にリッカはやれやれと内心ため息を吐いてから、セバンたちに仕事の進捗状況を確認する。
「じゃあ、まずは虹の雫の進捗確認から。どう? 採取は済んだ?」
リッカの問いかけに、虹の雫の作業をしていたらしいセバンたちが進み出て、首をコクリと縦に振る。
「何か困ったことはある?」
セバンたちは今度は首をフルフルと横に振る。リッカは彼らの答えに満足そうに頷く。
「そう。ありがとう。じゃあ、次は薬草の天日干しをした子」
リッカの呼びかけに一体のセバンが前に出た。