新人魔女の小さな助手(5)
「あぁ、私は、こんな物見たことがない」
「どこが変なんですか?」
リゼの答えにリッカはますます首を傾げる。そんな弟子の様子に師匠であるリゼは深いため息を吐いた。
「君はあれをゴーレムと言うが、本来ゴーレムとは巨大土人形のことを指すのだぞ。あんな小さな物のことではない。一体、何をどうしたらあんな物が生まれるんだ?」
「え? だって、巨大ゴーレムはかわいくないじゃないですか。小回りも効かないから、手作業を手伝ってもらうのにも不便だし。だから、小さい子を生み出せるように、わたしが魔法陣を改良したんです」
胸を張ってリッカは答えるが、どうやら師匠であるリゼには理解しがたいことらしい。眉を顰めて、じっとゴーレムの消えた奥を見つめている。
「研究のために助手を必要とすることは分かる。魔法陣を自分の使いやすいように改良するのも良い。……しかし、なぜ土人形なんだ? 助手を生み出すなら、もっと別の物があるだろう」
「え~。だって、土なら大体どこにでもありますから、必要なときに地面にササッと魔法陣を描けば、すぐに錬成できるじゃないですか。大きさも数も自由自在だし、力だってあるし……」
口を尖らせて抗議するリッカに、リゼは益々理解に苦しむという顔をする。
「だからって……」
「それにあの子たち、かわいいじゃないですか!」
リッカは鼻息荒く答えるが、師匠であるリゼの表情は相変わらず固い。難しい顔をしたまま、リッカに向き合う。
「……君はゴーレムに可愛さを求めるのか」
「勿論です! 小さくて可愛い方が見ていて和むし、親しみやすいじゃないですか。リゼさんも一度あの子たちを使ってみてください。きっと、あの子たちの可愛さが分かるはずですから!」
リッカの勢いに気圧されてリゼは一歩後ずさる。熱く語るリッカにリゼは返す言葉が見つからない。そのまま押し黙っていると、リッカが「あっ」と何か思いついたように声を上げた。
「そうだ! 今からリゼさんのお手伝いをする子を何体か出しましょうか?」
「……いや、いい……」
押しの強い弟子の主張をすぐには受け入れられないのか、リゼは難しそうな表情で首を振るばかりだ。
「わ、私には必要ない。一時の助手に可愛らしさなどいらぬ。それに、助手ならば君がいるではないか!」
ビシリと人差し指を突きつけて主張するリゼに、リッカは唇を尖らせる。
「そうは言いますけど、わたしだって色々と忙しいんですよ。なんてったって工房主ですから」