新人魔女の小さな助手(4)
作業場のガラス壁から見える場所に先ほどと同じようにゴーレムを生み出す魔法陣を描き、水晶をセットする。結界は使い魔の特訓用に広く張り巡らし準備が整った。
「それじゃあ、フェン。わたしはこれから森へ素材採取へ行ってくるから、その間、ここで特訓していてね。条件は前回と同じ。ゴーレムを生み出す水晶を魔法陣から解除すること。いいわね?」
「はい!」
フェンは元気よく返事をすると、水晶を守るように立ちはだかる、生み出されたばかりのゴーレムたちと対峙した。リッカはそんなフェンを残して森へと出発する。
素材採取の助手として連れてきたゴーレムを肩に乗せ、いつもの素材採取場へやってくると、リッカは肩から小さなゴーレムを下ろした。今日は時間がないので、常用する素材の採取だけにすると予め決めている。
「この草と、この花を集めてきて。わたしは、洞窟の方へ行ってくるから」
リッカと小さなゴーレムは手分けして素材採取を開始する。洞窟では、光苔と天然水晶それから品質の良い土を採取するつもりだ。洞窟内は相変わらず薄暗く、ひんやりとした空気が心地よい。この場所はリッカにとって既に秘密基地のような存在だ。リッカは鼻歌交じりに素材の採取を進め、すぐに洞窟を後にした。
途中、手分けして素材採取をしていたゴーレムとも合流し、リッカは作業場へ戻ってきた。作業場の扉を開けた途端、師匠のリゼがゴーレムの一体を捕まえて小突いている光景が目に入った。リッカは驚き思わず声を上げる。
「リゼさん、何をやってるんですか?!」
リゼはリッカの呼びかけに反応し、ゴーレムを小突くのを止めた。
「何だこれは?」
リゼは捕まえたゴーレムをリッカに向かって差し出す。リゼの手の中から逃れようとゴーレムは、リゼの指を叩いたり引っ掻いたりして奮闘していた。
「何って……。わたしの錬成したゴーレムですけど。とりあえず放してもらえませんか」
リッカの抗議にリゼは渋々といった様子でゴーレムを放す。解放されたゴーレムはリゼから逃げるように作業場の奥まで駆けていってしまった。リッカは素材採取の助手として連れていたゴーレムに素材の天日干しの指示を出す。それからリゼに向き直る。
「それで? どうして、わたしのゴーレムをいじめていたんですか?」
リゼは悪びれる様子もなく答えた。
「別にいじめてなどいない。ただ、珍妙な物が居たので観察していただけだ」
「珍妙?」
リッカはキョトンとして首を傾げる。