新人魔女の小さな助手(3)
「う~ん」
悩みの声を上げたリッカの元へフェンがやってきて、足元に座る。
「リッカ様」
「なぁに? フェン」
「お願いがあるのですが」
リッカは足下の使い魔を見下ろした。神妙な面持ちのフェンと目が合う。
「お願い? 流石に虹の雫はもうあげられないわよ」
「いえ、そうではなくて。……あの、僕、また特訓がしたいのですが」
そう言って、フェンは前足でポフポフと地面を叩いた。その仕草にリッカはフェンが何を言いたいのかを察する。
「あぁ、ゴーレムを出してほしいってこと?」
「はいっ!」
フェンはピンと耳を立て、瞳を輝かせた。リッカはフェンの元気な返事に思わず笑みをこぼした。ゴーレムを錬成することなど大した手間ではない。リッカはフェンの願いを了承しようと口を開いた。
「いいわよ。それじゃあゴーレムを……」
しかし、リッカの承諾の言葉は途中で途切れた。どうしたのかとフェンがリッカを見上げる。リッカは瞳をパチパチと瞬かせるばかりで一向に動く気配を見せない。心配になった使い魔は、主の足に自身の体を擦り付け声をかけた。
「リッカ様、どうされたのですか?」
リッカはハッと我に返る。そしてそのまま目を瞬かせた。
「そうよ。ゴーレムを使えばいいんじゃない。うっかりしていたわ。これで万事解決。フェンのおかげよ」
リッカはポンと手を打った。そして、足元にいる使い魔の頭をぐりぐりと撫でる。フェンは訳が分からないといった様子だったが、それでも主に撫でられることが嬉しいのか、くすぐったそうにしながら喉を鳴らした。
リッカは早速錬成の準備に取り掛かる。畑の一角に魔法陣を描き土属性の魔力を含んだ水晶をセットする。そしてその魔法陣を囲むように小さな結界を張った。これからしばらくの間使うことになる魔法陣なので、誤って消してしまわないための措置だ。結界内ではゴーレムたちが生まれ、すぐにリッカの元へ集まってきた。五体のゴーレムがリッカの足下に整列する。
「わたしの仕事を手伝って。あなたとあなたは、畑の管理を。もしも変わったことがあったらすぐに知らせて。少しの変化も見逃さないように。あなたとあなたは、虹の雫の管理を。貴重な物だから扱いには気をつけて。それから、あなたはわたしについてきて」
指示を出されたゴーレムたちはわらわらと散っていき、各々の仕事に取りかかる。リッカはゴーレムたちの作業風景をしばらく眺めた後、フェンと一体のゴーレムを従えて作業場の外へ出た。