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新人魔女、初めてのお仕事契約(5)

 そんなラウルにオリバーはいつもよりも少し語気を強くする。


「店を一人で切り盛りする人は、頑張りすぎてはいけません。倒れてしまっても、代わりの人材はいないのですよ」

「それは分かっています。ですが……」

「ラウルさん、本当のことを言ってください。体調が悪いのではないですか?」


 突然リッカが口を挟んできた。ラウルはそんなリッカに一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐに首を振った。


「……大丈夫だよ。大したことない。ここ最近、販路開拓とか契約農家を探すために根詰めて仕事をしていたから少し寝不足なだけさ。結局、見つからなくてオークションに頼ってみたんだけど……ね」


 ラウルはそう言いながらも、どこか辛そうに笑う。そんな彼の様子を見ていたリッカの眉間に皺が寄った。


 リッカは突然自分の鞄をゴソゴソと漁ると、中から瓶を取り出した。それを有無を言わさずラウルの手に握らせる。かなり冷えているようで、ラウルの手にじんわりとした冷気が伝わってきた。その冷たさに驚いたラウルは思わず手の中にあるものを見る。雪が瓶の中でチラチラと舞っていた。氷精花を保存している瓶だ。ラウルがリッカを見ると、彼女は真剣な眼差しで彼を見つめていた。


「やはり、わたしと契約しましょう! そうすれば、契約農家を探さなくてよくなるので、少しはラウルさんの負担を減らせるじゃないですか」


 リッカは、瓶を握らせたラウルの手を両手で包み込みながらズイッと顔を近づける。その眼差しには強い意志が感じられた。ラウルはリッカが発する圧力に目を白黒させる。


 二人はしばらくの間見つめ合っていたが、やがてラウルが根負けしたように小さく息を吐く。そしてリッカに向かって小さく頷いた。


「分かった。それじゃあ、契約をお願いしようかな」


 ラウルの答えにリッカの顔がパッと華やいだ。


「本当ですか? よかった! これからよろしくお願いしますね」

「こちらこそ。よろしく」


 二人の様子を見ていたギルド長は内心ではいろいろと思うところがあったが、本人たちの意志を尊重しようとそれからは手早く契約書の作成準備に取り掛かった。


「それでは、今回は原材料の卸売りの契約成立ということでよろしいですかな? 落札価格は確か銅貨十枚だったと思いますが、こちらの価格を原材料である氷精花の一株の価格としましょう」


 事務的に話を進めるオリバーにラウルが頷いて見せる。オリバーは、ラウルの頷きを確認してから契約書の作成を始めた。

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