新人魔女、初めてのお仕事契約(4)
「わたし、まだ工房主になったばかりですし、信用がないことはもちろん分かっています。でも、ラウルさんのお力になりたいんです」
「……一体どうして?」
ラウルは困惑したようにリッカを見る。どうしてリッカがここまで言い張るのかと疑問に思っているようだ。リッカはそんなラウルにニコリと微笑む。
「だってわたし、ラウルさんの作るスイーツが大好きなんですもの」
その一言にラウルは大きく目を見開く。そして、少し照れたように笑う。
「それはありがとう」
「ラウルさんには、これからもたくさん美味しいスイーツを作って欲しいんです」
「うん。頑張るよ」
リッカの言葉にラウルは大きく頷く。しかし、その顔を見てリッカの顔が曇った。
「是非がんばって欲しいのですけど、最近のラウルさんは青い顔をなさっているように思うんです。わたし心配なんですよ。お身体の調子が優れないんじゃないかって」
リッカの思いがけない言葉にラウルは困ったように視線を泳がせた。
「もしラウルさんが倒れてしまったら、美味しいスイーツが食べられなくなるじゃないですか!」
「えっ……」
「それは困るんです! ですから、ラウルさんに倒れられる前に、わたしがなんとかお力になりたいんです!」
「いや、その……」
リッカの迫力にラウルはタジタジになる。そんな中オリバーが静かに口を開いた。
「お嬢さんの言う通りですよ、ラウルさん」
ギルド長の突然の言葉に、ラウルとリッカの視線が彼に集まる。そんな二人の視線をしっかりと受け止めてオリバーは言う。
「貴方は少し無理をされていますよね?」
「いや、そんな無理だなんて……」
オリバーの言葉にラウルは首を横に振る。しかし、それを否定するようにオリバーも首を振った。
「いいえ、貴方は自分の限界を見誤っていると思いますよ。本来ならば、今は休息をとるべきだと思います」
「ですが……」
オリバーの言葉にラウルは目を伏せる。その表情は苦悩しているようにも見えた。
「貴方のお気持ちはわかります。休むということは、すなわち店を閉めなくてはいけませんからな」
「はい。せっかく僕の店のスイーツを楽しみにしてくれているお客様たちがいるのにそんなこと……」
ラウルは唇を噛む。そんなラウルにオリバーは静かに頷いた。
「ええ、わかりますよ。貴方はとても真面目な方ですからね。でも、時には休むことも必要です」
「ですが……今の僕には休んでいる暇なんてないんですよ!」
ラウルは拳を握りしめる。