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新人魔女と白紙の魔術書(8)

 グリムは感心したように呟きながら、リッカの隣へちょこんと座った。リッカは子狼の頭を軽く撫でながら、誇らしげな表情で答えた。


「はい! 上手くいきました!!」

「せやなぁ……。それで、名前は決めたんか?」


 グリムの問いかけに、リッカは不思議そうに首を傾げた。


「え? この子の名前って私が決めるんですか?」

「当たり前や。それが契約の決まり事なんやで」

「そうなんですか。うーん、どんな名前がいいかな……?」


 リッカは腕を組みながら真剣な表情で考え込む。その様子を、クッキーを食べ終えた子狼はじっと見上げていた。


 しばらくして、リッカはぱあっと明るい顔になってポンと手を打った。


「そうだ。『フェン』っていうのはどうかしら?」


 リッカがそう口にすると、子狼が一瞬パッと輝いた。それから尻尾を振りながらリッカに飛びついた。


「ワーイ!! リッカ様!! ありがとうございますっ!!」

「フェ、フェン? あなた話せるの?」


 驚いているリッカに対して、子狼……改めフェンは得意気に鼻を鳴らした。


「はい!! リッカ様に名を与えて頂きましたので。こうして話せるようになりました。それにほら、こうやって姿を変えることだってできるんですよ?」


 そう言った瞬間、フェンの姿がみるみると小さくなり、やがて一羽の小鳥へとその姿を変えた。小鳥はリッカの頭上まで飛んでくると、パタパタと羽ばたいて彼女の右肩に止まった。


「すごい! 話せたり変身できたりするなんて。ね、グリムさん。この子、すごいですよね」


 リッカは感動した面持ちでそう言った。再び子狼の姿に戻ったフェンは嬉しそうにリッカの周りを駆け回る。


「せやな。けど……」


 何か言いかけたグリムの言葉は、楽しげに笑うリッカの耳には届かない。フェンと楽しそうに駆け回るリッカは、ふと思い付いたように口を開いた。


「そうだ! フェン。今日をあなたのお誕生日にしましょう!」


 リッカの提案に、フェンは立ち止まると不思議そうに首を傾げた。しかし、すぐに元気よく一声吠える。


 リッカとフェン、そしてグリムは、それからのんびりとした時間を過ごした。グリムがフェンに使い魔としてのイロハを教えたり、みんなで日向ぼっこをしたり。とても平和でのどかなひと時。


 使い魔たちに出会ったこの日は、リッカにとって特別な一日となった。


 しかし、ほっこりとした気持ちを抱くリッカとは反対に、師匠の使い魔が時折難しい顔を見せていたことに、新人魔女は気が付かないでいた。

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