新人魔女の初オークション(6)
ジャックスの言葉が気になり、リッカは隣に座るギルド長へ体を寄せると小声で話しかけた。
「いつもこのように盛況なのですか?」
「ん? ああ、今日は特に盛況だね。目玉商品のおかげでいつもよりも集客が多いから。ほら、出てきた」
ギルド長もリッカに顔を寄せて答えながらホールの前方にある舞台を指し示す。丁度次の品が壇上へと運び込まれたところだった。大きな宝石が展示される。どうやらあれが今日の目玉商品らしい。再び司会者が前に進み出た。
『皆様お待たせいたしました。本日の目玉商品の登場でございます』
ホールにどよめきが起こる。それまでゆったりと壇上を眺めていたミーナの背筋がピンと伸びた。真剣な眼差しで品物を見つめている。
『こちらは西方の島で見つかった宝石でございます。ご覧くださいこの大きさ! 一抱えはありそうなほどの大きさです』
司会者が手を広げてその大きさを示すと、会場に再びどよめきが起こった。リッカも思わず身を乗り出し壇上を見る。確かに大きい。深い緑色をしたそれは、照明の光を反射しキラキラと輝いている。
『この宝石、大変純度の高い物であると推察されますが、大きすぎるが故どのくらいの高純度であるかは、当方では調べることができませんでした』
「まあ! それでは商品価値が分からないではありませんか」
エルナが、なぜそのような物が目玉商品なのかと疑問の声を小さく漏らす。
『しかし、この大きさです。大変貴重な物であることは間違いありません。そして何より、この美しい輝きをご覧ください。これほどの宝石には滅多にお目にかかることは出来ません』
司会者の言葉にあちらこちらから「確かに」と感嘆の声が漏れ聞こえる。
『それでは、この宝石は金貨二〇〇枚からのスタートです!』
司会者の声と共に参加者たちの手が次々と挙げられた。入札額がどんどん釣り上がっていく。リッカたちのテーブルからも声が上がった。
「八〇〇枚っ!!」
ミーナだ。ミーナが大幅に入札額を釣り上げた。競り合っていた参加者たちの間に一瞬の沈黙が訪れる。それからザワザワと会場内が騒がしくなる。
「八〇〇枚が出ました! 他にはいらっしゃいませんか?」
司会者の声に参加者たちが互いの顔を見合わせる。次第に声が小さくなり、やがて止んだ。
『それでは、こちらの商品は金貨八〇〇枚での落札となります!』
その声と共に割れんばかりの拍手がホールに響き渡る。どうやら目玉商品はミーナが競り落としたようだ。