新人魔女の初オークション(5)
『皆様、本日はよくぞお越しくださいました。これよりオークションを開催いたします』
司会者の挨拶が終わると同時に再びホールに明かりがついた。男性が恭しく一礼する。いよいよオークションの始まりだ。
まず初めに出品された品は、薪の束だった。リッカは思わず目を丸くする。薪の束など、わざわざオークションで競り落とす者がいるのだろうか。そんなことを疑問に思っていると、司会の男性が商品の説明を始めた。
『こちらの薪は、名のある冒険者が寒冷地にて採取したものです。並大抵の方法では手に入らない上物です。しっかりと乾燥させてあるため、着火がスムーズに行えます。それなのに、なかなか燃え切らないので、何度でも繰り返し使えてコストパフォーマンス抜群です。料理屋や鍛冶屋など、火を使う職業の皆様にはおすすめの一品でございます』
司会者の説明に参加者は口々に感嘆の声を上げる。リッカの横では、エルナが「まぁ、そのような物が」と興味深そうな声を漏らしていた。なるほど、オークションに出されるだけあって、この薪には他にない特徴があるようだ。
『お値段は銀貨一枚からどうぞ!』
司会者が言い終わると同時に参加者たちの手が挙がる。次々と入札の声が上がり、瞬く間に薪は落札された。
「すごい、あっという間に決まってしまったわ」
リッカが呆気にとられていると、隣に座るギルド長が説明してくれた。
「薪は生活には必須の道具だからね、結構需要が高いんだよ」
なるほど、とリッカは納得したように頷く。
『では次の商品です』
司会者の言葉とともに、舞台袖から台車に乗せられた魔道具が出てくる。今度は火を点けるための魔道具らしい。薪の後に火の魔道具を出してきたのは、セット売りでも考えているからだろうか。
ギルドの進行手法に一人納得しながら、壇上の司会者が実際に魔道具を使いながら性能を説明している様を見る。実演を見る限り、魔力がない者でも使える生活魔法用の加工魔石が組み込まれているようだった。説明が終わると落札が始まり、これもすぐに買い手が決まった。
オークションは順調に進行していく。先の薪や魔道具といった生活に必要な物から、宝飾品や絵画など趣味に関係した物まで様々な品が出品されていく。ある品の値はどんどん釣り上がり、誰かが落札する度に歓声が上がったり拍手が起こったりする。
「いやぁ、今日のオークションは見ごたえがあるな」
ジャックスが感心した様子でホールを眺める。