新人魔女の初オークション(4)
一行はギルド長を先頭に扉をくぐる。扉の向こうは天井の高い大ホールになっていた。
「さぁ、ここがオークション会場だよ」
前方には舞台が設えられている。広間には丸テーブルがいくつも置かれており、そこにはすでに何人かの参加者が席についていた。リッカたちも空いている席を見つけて座る。リッカたちの後からも続々と参加者がホールへ入ってきて空席を埋めていく。
「随分と多くの人がいらっしゃるのですね」
エルナが興味深そうに辺りを見回す。ギルド長が言うには、今日のオークションには古参の宝石商が出品者として参加するとのこと。その宝石商が扱う品はどれも品質が良いことで有名らしい。チラシにも大きく掲載されている目玉商品の宝石もその一つのようだ。
リッカはチラシに載っていた絵を思い出す。
「大きくて、立派な宝石のようですね」
「まぁ! リッカちゃんも宝石に興味が?」
リッカとギルド長との会話にミーナが目を輝かせながら割り込んできた。リッカは苦笑いをしつつ首を振る。
「いえいえ。わたしはそれほどでも。あ、でもリゼさんが使っている宝石には興味がありますけど」
「まぁ、大賢者様は宝石にご興味がおありなの?」
「それは分かりませんが、いろいろな宝石をお持ちですよ。しかも、その中が使役獣の寝床になっているんですって」
「え? 寝床?」
ミーナは首を傾げる。一般的に宝石は、着飾るためや贈答品として価値を認められている。それ以外の使い道など想像もつかないのだろう。リッカもリゼの使役獣を見るまでは宝石がそのような使われ方をするなど思いもよらなかったのだ。リッカは頷きながらそんな説明をする。ギルド長も興味深そうにリッカの言葉に耳を傾けていた。
「まぁ、そのようなことが? もしそれが可能なら、たくさんの使役獣を連れて歩くことができますね」
ミーナは感心したように頷く。しかしリッカは残念そうに眉を顰めた。
「そうなんですよ。でも、たぶんリゼさん程の魔力持ちでないと扱うことができないのだと思います。誰でも扱うことができるのであれば、既に流通しているはずですから」
「そうねぇ」
リッカの言葉に納得したのか、ミーナも残念そうに頷く。
リッカとミーナがそんな話をしていると、突然ホールの照明が落ちた。辺りが暗闇に包まれ、ざわついていた参加者たちも口を噤む。そして舞台上にスポットライトが当たる。そこにはタキシードを着た男性が立っていた。男性はマイクを片手に挨拶をする。