新人魔女の初オークション(2)
「今日の目玉商品は宝石だそうですよ」
リッカは通りを歩きながら、鞄からチラシを取り出しエルナに手渡した。
「こちらの商品がミーナさんの気を惹きそうだと、ギルド長とジャックスさんが仰っていました」
「まぁ、ミーナ先生もお見えになるのですか?」
エルナはチラシを受け取りつつ目を輝かせた。ミーナと会えるのが嬉しいのだろう。しかし、同時に心配そうに表情を曇らせる。
「ですが、身重のお体ですのに、大丈夫なのでしょうか」
「どうでしょうか? でも、無理ならジャックスさんが止めるでしょうし」
「それもそうですわね」
リッカの言葉にエルナも納得したようだ。それからギルドまでの道のりを、二人はオークションのチラシを見ながら楽しげに歩いた。
リッカとエルナが共にギルドの扉を開け中へ足を踏み入ると、すぐに職員のデイジーが気づいてカウンターから声をかけてきた。
「あら、リッカちゃん。おはよう」
「おはようございます、デイジーさん」
リッカはお辞儀をして挨拶をする。エルナもそれに倣って頭を下げた。
「そちらのお嬢さんは?」
「あ、わたしの義姉です。同じ工房で働いています」
「まぁ! そうなのね。今日は二人でオークションに来たの?」
「はい。ギルド長さんはおみえですか? オークションを案内していただくお約束になっているのですが」
「そうだったの。じゃあ、呼んでくるからあそこで少し待っていてちょうだい」
デイジーはロビーに設置されている長椅子を指してからカウンターを出ると、ギルドの奥へ姿を消した。椅子に座り待っている間、エルナは興味津々といった様子でギルド内を見回している。しばらくしてデイジーが二人の元へ戻ってきた。
「もうしばらく待っていてほしいとのことよ」
「分かりました。ここでお待ちしています。ところで、デイジーさん。ラウルさんは今日はもうこちらへ見えていますか?」
「え? ああ、スイーツ店の彼ね。今日はまだ見ていないわね」
「そうですか……」
リッカは残念そうに肩を落とした。そんなリッカの様子が気になったエルナが声をかける。
「リッカさん、どうかされましたか?」
「ええ、ちょっと。ラウルさんと少しお話したいと思ったのです。昨日お会いしたときに随分と顔色が悪かったので、少し心配で」
「まあ、そうでしたのね」
リッカの話を聞いて、エルナも心配そうな顔をする。
「彼は今日は出品者だから必ずギルドへ来るはずよ。来たらリッカちゃんが心配していたと伝えておくわ」