新人魔女とギルド長(7)
それから、ふと思い出したように手を打ち鳴らす。オリバーのぱんと手を打つ音にリッカは驚き、ジャックスは面倒くさそうに溜息を吐いた。二人の反応に微笑みながらオリバーが口を開く。
「そうだ。ギルドでは加入者の方へオークションへの参加をお願いしているのですが、お嬢さんも参加をお願いします」
「あ、はい。ジャックスさんからその件については事前に伺っています」
「そうでしたか。では早速、今月参加されてみては如何ですかな?」
オリバーはそう言うと椅子から立ち上がった。執務机から一枚の羊皮紙を取ると、リッカの前に差し出す。
「こちらが今月のチラシです」
リッカは差し出されたチラシを戸惑いながら受け取る。表には目玉商品である宝石の絵とともに、オークションの開催日が大きく記されていた。裏面には他に出品される品物の名前などが記載されている。リッカが受け取ったチラシをジャックスも覗き込む。
「ほう。今月の目玉は宝石か。ミーナが食いつきそうだな」
「そうなのですよ。出品者から事前に商品を見せてもらいましたけど、随分と純度の高そうな宝石でしたよ。是非ミーナさんにはお越しいただきたい。だけど、体調の方は良いのですか。妊娠ともなると私たち男には分からないこともあるでしょう。あまり無理をさせてはいけませんよ」
「分かっている。最近はようやく食べられるものが見つかったんだ」
ジャックスがそう言うとオリバーは安心したように頷いた。彼の表情からは息子の嫁であるミーナに対する深い愛情を感じることができる。二人がそんな他愛ないやりとりをしている横でリッカはチラシを見ていた。
「ラウルさんも出るんだ」
そう呟いたリッカにジャックスが気が付いた。そして不思議そうに尋ねる。
「どうした?」
「あ、いえ。ラウルさんが出品するそうなので……つい」
「ああ。お知り合いの方ですか。では、どうです? お嬢さんも是非ともご参加されませんか?」
「でも、オークションは明日なのですよね?」
リッカはチラシの表面をもう一度確認する。
「明日すぐに出品できるものなど、わたし……」
「ああ。これは失礼。出品者は事前登録が必要なので、さすがに今日の明日では手続きが間に合いません。ですが、落札者側は参加自由ですので、当日ギルドへお越しいただければ大丈夫なのです。ちなみに、オークションへの参加費は、出品者の場合は落札価格の一割を、落札者の方には入場料として銅貨一枚を頂いております」




