表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/461

新人魔女と白紙の魔術書(7)

 球体に向かってそう心の中で呼びかける。すると、その言葉に応えるかのように、リッカの手の中の球がふわりと光を放った。その光は徐々に眩しさを増していき、リッカは思わず目を細めた。


 パキッと何かが割れるような小さな音が手の中から聞こえたかと思うと、光が徐々に収まっていった。光が完全に消え去った後、球体は跡形もなく姿を消してしまっていた。


 代わりに、白銀の毛並みを持つ一匹の小さな子狼の姿があった。その獣は、今まで見たどの生き物よりも美しい姿をしていた。白銀色に輝くその身体はキラキラと輝き、その瞳は深い青色をしている。青く澄んだ双眼は、まっすぐにリッカを見つめている。


 その子狼に見惚れてしまったリッカは、しばらくの間呆然としていたが、我に返って慌てて口を開いた。


「はじめまして。私はリッカ。あなたの名前は?」


 リッカはそう言って優しく微笑みかけた。すると、子狼は小さく吠えてからリッカの腕の中で身体を捩る。リッカは驚きながらも、その身体を抱きとめた。


 リッカに抱き抱えられた子狼は、リッカの顔を見てもう一度鳴いた。


「……クゥン」


 それはとても可愛らしい鳴き声だった。リッカは胸の奥がきゅんとする感覚を覚えた。


 しばらくそのまま抱きしめた後、リッカはそろりと手を離してその場に座り込んだ。どうやら使い魔召喚に成功したようでホッとしたのだ。


 子狼の方も、リッカの隣にちょこんとお行儀よく座っている。リッカはその様子を見てくすりと笑うと、鞄の中からおやつを取り出した。


「よかったら食べる?」

「ワウ!」


 子狼が元気に返事をする。それから、嬉しそうな顔をして差し出されたクッキーを食べ始めた。そんな様子に、リッカは再びクスッと笑みを浮かべた。


「美味しい?」


 そう言いながら、リッカは子狼の頭を撫でてやった。気持ちよさそうに、子狼はリッカの手にじゃれついてきた。


「もう名前決めたんか?」


 突然後ろから声をかけられ、リッカはビクリと肩を震わせた。振り返ると、グリムが興味深げにこちらの様子を窺っていた。


「あ、グリムさん。どうですか? 使い魔召喚に成功しました!」


 リッカはそう言うと、満面の笑みでグリムに笑いかける。そんなリッカに、グリムもつられて笑顔を見せる。その後、再度視線を子狼へと移した。子狼はクッキーを食べるのに夢中になっているようだった。


「えらい可愛らしいやんけ。それにしても、まさかほんまに一度で成功するとは思わんかったわ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ