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新人魔女とギルド長(1)

 新人魔女の足下を使い魔の子狼がとてとてと歩く。そのしっぽが時折リッカの足にふわりと当たり、リッカはくすぐったさを感じながら、街中を歩く。リッカが向かっているのはプレースメントセンターである。仕事を探していたとき以来すっかり足が遠のいてしまったが、今日は約束があり再び訪れることになっていた。


 意気揚々と歩いて行くリッカの足へまたもや子狼のしっぽが触れた。楽しそうにしっぽが揺れている。


「フェンは街が好き?」


 足下の使い魔に声をかけるとフェンは嬉しそうにしっぽを振った。


「はい。美味しそうな匂いがたくさんしますから」


 主に遅れまいととてとてと歩きながら子狼は鼻をひくつかせている。リッカはその愛らしさに思わず笑顔になった。


「そうよね。わたしも大好き。そうだ。帰りにラウルさんのお店へ寄りましょうか。新作スイーツが出ているかもしれないし」

「はい。楽しみです」


 そんな会話を交わしていると程なくして、目的地へと辿り着く。相変わらず古めかしい建物だ。その扉を押し開く。カランコロンとドアに取り付けられたベルが鳴った。ロビーには仕事を探す年若い魔法使いや、お仕着せのような服を身に付けた少女が求人票の貼り付けられた掲示板を見つめていた。


 リッカがキョロキョロと辺りを見回していると受付の女性が声を掛けてくれた。所長のジャックスとの面会を申し出ると、すぐにジャックスを呼んできてくれる。


「おう、嬢ちゃん。よく来たな。気持ちは変わらないか?」

「はい。変わりません」


 リッカがそう答えると、ジャックスはニヤッと笑った。そして「じゃあ行くとするか」と言ってロビーを出て行こうとする。リッカは慌ててジャックスへ付いて行った。後ろからフェンもちょこちょことついてくる。


「その使役獣……じゃなくて使い魔だったか。今日は一緒なんだな」


 ジャックスはリッカの足下に視線を向ける。


「ふふ。いつも一緒なんですよ。外にいないときは、この子はわたしの影に入っているんです」

「そうなのか。影に入るなんてやはり使い魔は珍しい」


 ジャックスは感心したように呟きながらぴたりと足を止める。リッカは思わず首を傾げた。プレースメントセンターを出てから数分と経っていない。


「ジャックスさん、どうかしました?」


 リッカが尋ねると、ジャックスはいたずらっぽく笑う。


「着いたぞ。ここが商業ギルドだ」


 ジャックスはそう言うが、まだプレースメントセンターの敷地すら出ていなかった。

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