新人魔女のギルド加入(7)
「本当に工房主になるんだな、嬢ちゃん。これから大変だぞ」
「大丈夫です。ギルドのサポートは手厚いようですし。きっとジャックスさんも力になってくれますもの。ね?」
リッカが笑顔で言うと、ジャックスは困ったように頭を掻いた。
「いや、……まあそうだな。困ったことがあったら何でも相談してくれ」
リッカは再び頷いた。工房運営に関しては、いずれ学ばなければならないことだろうと思っていた。それが少し早くなっただけで特別困るようなことでもない。ギルドから手厚いサポートを受けられるのであればむしろ安心である。それにプレースメントセンターの所長であるジャックスが力になると言ってくれているのだ。これ以上に心強いことがあるだろうか。
「はい。ありがとうございます」
リッカが笑顔で礼を言うと、ジャックスはどこか複雑な表情を浮かべたまま頷いた。こうして、リッカは工房主となった。
「早速ですがジャックスさん。わたし、作業用の服を調達したいと思っているのですけど、どこか良いお店をご存知ですか?」
リッカの唐突な質問にジャックスはきょとんとした表情を浮かべた。それから、顎に手を置き考える。
「作業服か……。嬢ちゃんのか?」
「いえ、お姉様の分です。工房用の制服とでも言いましょうか。お仕着せのような動きやすい服装でいて、あまり貧相に見えないものが欲しいのですけど」
リッカの注文にジャックスは首を傾げる。
「どうだろうな……。俺はそういったことには詳しくない」
「そうですか」
ジャックスの答えにリッカがどうしたものかと思案していると、リゼが口を挟んだ。
「エルナさんの服ならば私が準備しても良いぞ。王室が使っている仕立て屋に頼めばすぐだ。腕も申し分ない。高級な生地をふんだんに使った物を作らせるとしよう」
リゼが鼻息荒く言う。しかし、リッカは首を横に振った。
「いえ。それは。お姉様は今着ているもののように気軽に着られる服が良いそうなので」
流石にジャックスの前でエルナが侍女服を着ているとは言えず、リッカは言葉を濁しながらリゼを制する。
「……そうか。あのような服か。それは……」
リゼは少し残念そうに項垂れた。リッカはそんなリゼを気にしながらも、ジャックスに向き直る。
「作業服でなくとも良いのです。どこか心当たりはありませんか?」
ジャックスは困ったように頭を掻く。
「悪いが俺にはさっぱりだ。後でミーナに聞いておこう。良い店を知っているかもしれないぞ」