新人魔女のギルド加入(6)
ジャックスはそんな二人の様子を興味深そうに眺めている。それから、ニヤリと笑った。
「嬢ちゃんの言う通りだ。工房主の決定には従うべきだ。それに、ギルドへの加入は、工房運営において非常に有益だ。嬢ちゃんの判断は間違っていない」
ジャックスはリッカの決意を援護するように大きく頷いた。リッカは再びジャックスへ視線を向ける。
「ギルドへの加入だけでしたら、わたしとしては構いません」
リッカの返事にジャックスは少し表情を曇らせた。
「いや、加入だけではなく、嬢ちゃんには工房の収支状況と共に毎月ギルドへレポートを提出してもらいたい。これは義務ではないが、嬢ちゃんのような新米が店を持った時には面倒でもしっかりとやるべきだ。そうしておけば何か困ったときにギルドが工房運営をサポートしてくれる。その際の判断基準として収支報告は必要なんだ。実際これは面倒だからやっていない工房主も多いのだが、どんな工房で、どんな状況に置かれているのかをギルドが把握していれば、迅速なサポートが行えるんだ」
「なるほど」
どうやらリッカが思っている以上に工房運営は面倒くさいらしい。リゼがギルド加入に乗り気ではなかったのも納得できる話である。しかし、これはリッカにとっては悪い話ではない。なにせ、右も左も分からない小娘をサポートしてくれるというのだから。
リッカは頷く。
「わかりました。しかし、レポートというのはどのようなものでしょうか? 何か決まった書式があるのでしょうか?」
リッカの言葉にジャックスが困ったように頭を掻いた。
「レポートは義務ではないから、決まった書式はないんだ。毎月の売り上げと支出、それからどのような商品が売れているか。どのような商品が売れていないのか、その時の状況を書いてくれればいい」
「わかりました」
リッカの返事にジャックスは満足そうに頷く。そんなジャックスへ向けてリゼが大げさにため息を漏らした。
「社会経験のないひよっ子にそんな無理を言ったところで出来やしない」
リゼの言葉を受け、ジャックスは不敵に笑う。
「そんなひよっ子を工房主に推したのは、どこの誰だ?」
ジャックスの指摘にリゼはそっぽを向いた。リッカは慌てて二人の間へ割って入る。
「もう、リゼさんってば。わたしだってやるときはやりますよ。心配しなくてもレポートは書きますし、収支報告だってきちんとします」
リッカの言葉にジャックスが苦笑する。それから、少し表情を曇らせた。