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新人魔女のギルド加入(4)

「確かに本来ならばプレースメントセンターはそれぞれの工房のことには口出しなどしない。だが、それは工房運営を知っている者が主となるからだ」


 リッカはハッとした。確かに、この工房の実情を全く把握していない。いくら来客がほとんどなく日々に変化のない工房といえど、運営上の様々なリスクを把握していないというのは、万が一のときに致命傷となるだろう。リゼは不機嫌そうに眉根を寄せるが、何も言わずに腕組みをして話を聞いていた。そんなリゼの様子をちらりと横目で見ながら、ジャックスは話を続ける。


「プレースメントセンターとしては、マグノリア魔術工房には今後商業ギルドへの加入を勧めたい」


 ジャックスの言うギルドとは、組合のことだ。商業ギルドは国を跨いだ組織で、様々な業種の者が登録しており、仕事上のトラブルや困りごとを加盟会員の相互扶助の精神によって解決し合っている。この相互扶助が為されるおかげで、人々の生活は成り立っているとリッカはアカデミーの授業で聞いた覚えがあった。ジャックスが所長を務めるプレースメントセンターはそんなギルドの業務の一つらしい。


 ジャックスから出た提案にリゼが嫌そうに顔を顰めた。リゼは人付き合いを好まないため、人と関わることの多いギルドへの加入を嫌っていたのかもしれない。


「これまでそのようなことを言ってきたことはないではないか」


 リゼの不満に、ジャックスは呆れたように頷く。


「本来なら加入していた方がいいのだ。だが、お前はギルドへの加入を拒否しただろう」

「当たり前だ。あんな煩わしいもの」


 リゼの言葉に、ジャックスは苦笑を漏らす。それからリッカへ視線を向けると言葉を続けた。


「リゼはこう言うが、ギルドに加入すれば様々な恩恵がある。例えば、商品の仕入れ。これをいかにストレス無く行うかは、工房主として常に考えなくてはいけないことだ。逆に商品の販路開拓などもギルドを通せば楽に行える。他にもギルドを通せば、他国の商品も手軽に手に入れられる。旅商人は必ずギルドへの登録が課せられているので、この旅商人を通じて他国と繋がれるメリットは工房にとって大きいだろう」


 ジャックスの言葉にリゼはふんと鼻を鳴らす。


 ギルドへ加入すれば色々な恩恵があるらしい。工房を運営するのであれば、受けられる恩恵は多少なりとも受けた方が良いような気がする。しかし、リゼの様子を見れば分かる通り、煩わしさもあるのだろうとリッカは思った。

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