新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!(3)
「嬢ちゃんが腕の立つ奴だってことは分かったよ。けど、それなら尚更街の工房で職を探せばいいだろう? 嬢ちゃんほどの成績の持ち主なら、それこそ職場は選び放題だぞ?」
ジャックスの言葉に、リッカは首を振る。
「ふむ……嬢ちゃんの希望っていうのは、実習がたくさん出来るってことか? まぁ、確かに街の工房見習いは始めのうちは雑用ばかりで、とてもじゃないが実習なんてできないが……」
ジャックスが考える素振りを見せると、リッカは大きく頷いた。
「そうなんです。実習が出来ないというのは、わたしにとって死活問題なのです。それからもう一つ、譲れない条件がありまして……」
「なんだ?」
「はい。実は……のんびりと暮らしたいのです!」
「はっ?」
リッカが言うと、ジャックスは少し困った顔をした。
「いや……嬢ちゃん。悪いが、見習いのうちは、そんなのは無理だぜ。誰だってせっせと働くもんだ」
ジャックスの言葉に、リッカは再び首を横に振る。そして、真剣な眼差しで訴えた。
「それはそうなのだと思います。ですが、錬成の実習に多くの時間を割こうと思えば、街の工房見習いでは、実習の時間が取れないではないですか。ですから、あまりお客さんの来ない森の中の工房をわたしは探しているのです」
「そうか。それで森での仕事をご所望というわけか」
リッカの説明を聞いて、ジャックスは納得した様子だった。そして、顎に手を当てながらしばらく考え込むと、顔を上げた。その表情は先程までと違い、どこか嬉しそうに見える。何か思いついたようだ。彼はゆっくりと口を開く。
「よし、わかった! 嬢ちゃんにぴったりの工房を紹介してやるよ」
ジャックスは部屋の奥へ一度引っ込むと、一枚の紙を持って戻ってきた。彼が持ってきたのは、求人票だった。
そこには、こう書かれていた。
募集:魔法使い又は魔女
勤務地:東の森
職種:採集、調査員及び接客
給与:応相談(経験に応じて優遇)
仕事内容:主に薬草類の採集及び調査。依頼応対。
備考:初心者歓迎。
この条件を見て、リッカは目を輝かせた。やっと自分の希望に近い工房が見つかったのだ。リッカは期待に胸を膨らませた。
「あの……こちらの工房は?」
リッカが訊くと、ジャックスが答えた。
「あぁ、ここは俺の知り合いの工房だ。助手を探しているんだが……」
「本当ですか!? よかった! 是非紹介してください!」
リッカの反応の良さに、ジャックスは苦笑する。
「まぁ待て。まだ続きがあるんだ」