新人魔女のギルド加入(3)
「さっきも言っただろう。嬢ちゃんはまだひよっ子なんだ。そんな子どもを一人、森の工房に……」
「ジャックスさん。わたしなら平気ですから。これまでも工房の留守番をすることはありましたし。それにわたし、結構強いんですよ」
リッカはジャックスを安心させようと、笑顔で答える。もちろんこの話を持ち出した当のリゼは涼しい顔だ。ジャックスだけが険しい顔のまま頭を抱えていた。それからしばらくジャックスは考え込んでいたが、ようやく頭を上げると、リッカへ視線を向ける。
「嬢ちゃんが強いことはもう十分知っている。ただし、やはりプレースメントセンターとしては、今の運営体制のまま工房主を交代することには承服しかねる」
ジャックスの言葉にリッカは驚いた。リゼもジャックスの言葉に不服の色を見せる。
「なぜだ」
「さっきから言っているだろ。ひよっ子の嬢ちゃんに工房の運営を任せることが心配なんだ」
「そんなこと、お前には関係ない」
「関係ないことはない。就労者の就労状況をきちんと把握し、就労先の業務改善を提案することはプレースメントセンターの義務だ」
二人は睨み合う。その険悪な雰囲気にリッカは慌てて二人の間に割って入る。
「ジャックスさん。どうしたら、わたしがこの工房をリゼさんから引き継ぐことを認めてもらえますか?」
リッカの質問にジャックスは険しい顔を崩さない。リゼは腕を組み、不機嫌そうに目を細めている。しばらくの沈黙の後、ジャックスは口を開いた。
「嬢ちゃんには、それなりに魔術の知識はあるのかもしれない。だが、社会経験がない。そのため、今後工房運営を適切に行う上での判断基準を有していない。つまり、誤った判断の末他の者に迷惑をかける可能性がある」
確かにジャックスの言うことも一理ある。リッカには社会経験がない。そのことがリッカの未熟さにも繋がっている。それをジャックスは懸念しているのだろう。ジャックスの言葉にリッカは顔を曇らせた。リゼも険しい顔になる。
ジャックスはそんな二人の様子に構わず言葉を続ける。
「工房主をリゼから嬢ちゃんへどうしても変更したいと言うのであれば、こちらが提示する条件を呑んでもらいたい。それが嫌だと言うのであれば、プレースメントセンターとしては工房主の変更は認められない」
ジャックスの言葉にリゼは口を挟んだ。
「私の工房だぞ。そちらにどうこう言われる筋合いはない」
ジャックスはリゼへ視線を向ける。その目は険しい。