表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
297/461

新人魔女のギルド加入(1)

「どういうことだ?」


 ジャックスが、驚いた顔で聞き返す。


「だから、工房は彼女に譲る」


 面倒くさそうにそう言うリゼにジャックスは厳しい顔をした。


「だからその理由を説明しろ。嬢ちゃんはまだ仕事を始めたばかりなんだぞ。街の工房なら、見習いになりたての右も左も分からないひよっ子だ。そんな嬢ちゃんに工房を譲ってどうする? 当の嬢ちゃんだって困るだろうが」


 ジャックスはリゼを睨み付ける。しかし、リゼはそんな視線を気にする様子もない。


「なんとかなるだろ」


 平然と答えるリゼにジャックスはますます険しい顔をした。


「お前には嬢ちゃんを雇用した責任があるんだぞ。それを無責任に放り出すつもりか」


 なかなか会話の噛み合わない二人の間に、お茶を持ってきたリッカが割って入る。


「ジャックスさん。今日はわざわざ工房まで来ていただいてすみません」


 頭を下げるリッカにジャックスは慌てた。


「ああ! 嬢ちゃん、頭なんか下げなくていいんだ。どうせまたリゼの奴が勝手に言い出したことなんだろう」


 リッカが頭を上げると、ジャックスは苦笑いを浮かべる。


 工房主であるリゼが突然リッカへ工房を譲ると言い出したのは、昨日のことだった。


 そして、連絡を受けたジャックスがこうして慌てて工房にやって来たのだ。さすがは就労斡旋所の所長である。就労者のためなら、不便な森の中でも駆けつけると言うわけだ。


 リッカはジャックスへ椅子を勧めると、自分も席に着く。そして、事の次第を話し始めた。


 一通り話を聞いたジャックスは腕を組んで唸る。リッカが工房で働き始めてからまだ一ヶ月ほどしか経っていない。そんな短期間で工房を譲るなど前代未聞だ。しかし、リゼは本気らしい。そのことが余計にジャックスの頭を悩ませた。しばらく考え込んだ後、ジャックスはようやく口を開いた。


「嬢ちゃんの素性については、こいつやミーナから聞いていたから、今更驚きはしないが、嬢ちゃんは本当にいいのか?」


 ジャックスはリッカの目を真っ直ぐに見つめる。その真剣な表情に、リッカは小さく頷いた。だが、ジャックスはそれでも納得がいかないらしい。表情を厳しいものに変えて、さらに問いかける。


「そりゃ、この工房にはほとんど客は来ないだろうが、それでも工房があるということは一定の需要があるということだ。店ともなれば客の注文には完璧に応えていかなきゃならん。それは想像以上に難しい仕事だ」


 リッカはジャックスの言葉に再び小さく頷く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ