新人魔女と過保護な両親(8)
リッカの様子に気がつかないエルナは何とか義父を説得しようと口を開く。
「お義父様、何故分かって頂けないのでしょうか? 私はこちらを頂いてから何度も身に付けておりますが、一度も危険を感じたことなどありません。むしろこの魔道具のお陰で命を救われているのです」
エルナの必死の訴えにイドラは目を閉じ、再び考えに耽る。そして、ゆっくりと目を開けるとリッカとエルナを交互に見た。
「だが、それでも万が一ということは考えられるのではないか。魔道具が発動したときに暴走しないとは限らない。防御の威力が大きすぎて、逆に相手を攻撃しかねない。その時、君はどうする?」
イドラの問いかけにエルナはスッと息を飲む。言葉を継ぐことができないのか、エルナはただ父の顔を見つめる。
「お義父様……」
そんなエルナに代わりリッカが声をかける。
「お父様。危険があるかどうかなど、実際に使用してみれば分かることではありませんか?」
リッカの提案にイドラは怪訝そうな顔をする。
「実際に使用すればだと?」
その言葉にリッカは頷いた。
「はい、防御魔法のみですから危険はないと確信しております。ですので、実験してみましょう。お父様もその目で確認をすれば、この魔道具が問題ないものだと分かって頂けるのではないでしょうか?」
イドラとロレーヌは互いに顔を見合わせる。
「実験って……何をするの?」
ロレーヌがリッカに問いかける。
「そうですね……お姉様にこれを付けていただいて、お父様が攻撃魔法を仕掛るというのはどうでしょうか?」
リッカが涼しい顔をして放った言葉に両親はギョッとする。
「えっ! ちょっと、そんなの危険じゃない」
「そうだ。そんなことはできない」
二人の反応にリッカとエルナは当然のように苦笑した。
「大丈夫ですって。リゼさんの攻撃魔法を受けても完璧に防御したくらい強力です。ですから、ご安心ください」
リッカの自信に満ちた言葉にイドラは眉を顰める。そして、しばらく何かを考えていたかと思うと、勢いよく立ち上がった。
「わかった。そこまで言うならば試してみようじゃないか」
「あなた!」
ロレーヌが心配するのもわかる。普通なら子どもの戯言だと取り合わないだろう。だが、イドラは違った。娘たちの身を案じるからこそ、安全だと判断する材料を欲しているのだ。
斯くして一行は魔道具の検証を行うこととなった。結果はもちろん言うまでもない。両親は娘の魔道具作製の腕前を認めることとなった。