新人魔女と過保護な両親(6)
苦笑い気味に言ったリッカの言葉にロレーヌとエルナが目を見張る。
「まぁ、そうだったのですか?」
エルナの反応に、そういえばエルナには水晶のことはまだ話していなかったことを思い出した。
「実はそうなのですよ。わたしは防御魔法の付与と台座を造っただけで、石はリゼさんから頂いたものなんです」
リッカの言葉にロレーヌが頷く。
「さすが、大賢者様ね。こんなにも綺麗な物が人の手で生み出されただなんて……信じられないわ」
ロレーヌの感嘆の声に興味をそそられたのか、イドラは自分にも見せて欲しいと要求した。イドラは髪飾りを手にすると、先ほどのロレーヌ同様透かすようにして観察を始める。イドラの真剣な表情にリッカは思わず緊張する。
一体どんな言葉が飛び出るのだろうか?
リッカはゴクリと唾を飲み込む。
「あの……お父様?」
恐る恐ると言った様子のリッカの声に、イドラはようやく髪飾りから視線を外した。
「恐ろしいほどの魔力だな」
イドラにはそれなりに魔力がある。もちろんその量もだ。しかし、彼自身は自ら魔法を使うことや魔道具を造ることには興味がなかった。それでも、魔力や魔道具がどの程度のものかは、ある程度わかる。イドラは、自分では決して扱うことのできない程の莫大な魔力がこの髪飾りに込められていることを理解したのだ。
王宮に勤めるイドラでさえここまでの魔力を込めた魔石を見たことがなかった。この髪飾りに使われている魔石は大きさも然ることながら、込められた魔量が半端ない。
「これは国宝級だぞ」
その言葉にリッカとエルナは驚きを隠せなかった。
「私は……この魔道具が恐ろしい」
その言葉にリッカは息を飲む。そんなリッカに構わずイドラはさらに続けた。
「これほどの魔力を持つ石が組み込まれた魔道具が、危険でないとはとても思えない」
真剣そのものと言った面持ちで言うイドラに、リッカは激しく動揺する。イドラの態度からは、今後のリッカの魔道具制作に大きな制限を加えるであろうことが容易に想像できた。
リッカは今にも泣きそうな表情でイドラを見返した。そんな義妹の様子にエルナは居ても立っても居られなくなり声を上げる。
「お義父様っ! そんなことはございません。危険などと仰らないでください」
だが、イドラはエルナの訴えには応えず、険しい顔のままリッカを見つめている。
「……リゼさん立会いのもと、しっかりと試作点検をしております。ですから、危険性はないものと思いますが」