新人魔女と過保護な両親(5)
イドラは厳しい表情でそう言った。その言葉にリッカの心臓がドクリと大きく鼓動した。
「そんな……」
思わず声が漏れる。そんなリッカにエルナが優しく言う。
「大丈夫ですよ。リッカさんが造って下さった魔道具はどれも素敵なものではありませんか。危険なものなど一つもありませんから」
「お姉様……」
エルナの言葉にリッカは目を潤ませた。そんな二人の様子にロレーヌはため息を吐く。
「自分自身で扱うもの以外を造るなんて、それがどんなに責任の伴う行為なのか、貴女はちゃんと理解しているの?」
「それは……」
ロレーヌの言葉にリッカは気まずそうな様子で口籠る。
「リッカ。まずは魔道具の作製をすることについて、今一度考えなさい。考えたうえで、自身が負わなければならない責任をしっかりと認識しなさい。それが守れないようなら、魔道具など造ってはなりません」
「……はい」
釘を刺すロレーヌの言葉にリッカは真剣な顔で頷く。
「さて……それでは聞かせてもらおうかね?」
これまで黙って母子のやり取りを見守っていたイドラは、会話が落ち着いたところで、話の主導権を自身に引き戻す。イドラの言葉にリッカとエルナは素直に「はい」と答えた。そんな娘たちの様子にイドラも頷く。
「では、私からお話させて頂きます」
そう言うとエルナは持参していた髪飾りを手に席を立ち、義父母の側へ歩み寄った。そして、リッカが造ったという髪飾りを二人に見せる。
「こちらがこの度リッカさんが私の為に造って下さった魔道具です。私は魔力がほとんどありませんから、こちらを自身の力で発動させることはできません」
イドラが興味深そうに髪飾りを見つめる中、ロレーヌは瞬時に目の色を変え、エルナを見上げる。
「お借りしてもよろしくて?」
エルナが頷くと、ロレーヌはそっと髪飾りを受け取り、慎重に検分する。ロレーヌには然程魔力はない。そんなロレーヌが気にしているのは装飾品としての価値だ。
「まぁ、これはすごいわね」
ロレーヌは感嘆の声を漏らしながら、髪飾りを透かすようにして観察する。
「なんて綺麗……。これは魔石? このように澄んでいて大きなものが七色も入っているなんて」
ロレーヌはウットリとした様子で髪飾りを色々な角度から観察している。
「この大きさなら、一生働いても買うことはできないと思うわ」
その言葉にリッカが反応する。
「それは、市販のものではないんですよ。リゼさんが練り上げた魔石ですから。所謂特注ですよ」