新人魔女と過保護な両親(4)
「エルナの手前いつまでもあの子に厳しく言う訳にもいくまい。それでは、エルナが気にしてしまう。エルナは我が娘になったとはいえ、王家から預かっている子だ。気分を害するわけにはいかん」
「それは……そうですけれど……」
イドラの指摘にロレーヌは口籠る。
「それにリッカはまだ子供だ。大人のように物分りが良いわけでもないし、我慢強いわけでもない。言ったところで聞く耳をもたないだろう」
「まぁ、確かに少々頑固で融通のきかないところはありますわね」
ロレーヌの言葉にイドラはふっと笑みを零す。
「芯の強さという意味では、次期当主に相応しい資質なんだが」
「でも、危なっかしいですわ」
ロレーヌが俯きながら零すのにイドラは頷く。
「まぁ、よくよく見ていくしかなかろう。幸いにも、私たちの手を離れるのはもう少し先になったのだから」
イドラの言葉にロレーヌはため息を吐いた。
「分かりましたわ。あなたの仰るとおりに致しましょう」
「……ああ、そうしてくれ」
二人がそんな会話を交わしていると、それぞれの自室で着替えを済ませたリッカとエルナが食堂へやってきた。
「あら、お父様。まだ着替えが済んでいないのですか?」
リッカは、イドラが帰宅したままの格好である事に少々驚いた様子で言う。
「ああ、少々話し込んでしまったのでな。私のことは気にせず、先に食事を始めなさい」
そういい置き、自室へと足早に向かっていくイドラの背中にロレーヌは「わかりました」と答え、使用人に給仕の支度を始めるよう指示を出す。リッカとエルナはともに席に着いた。そして使用人たちが次々と料理を運んでくる。その間に、エルナはロレーヌへ向き直ると改めて謝罪の言葉を口にした。
「改めまして、お義母様。この度は色々とご心配をおかけしてしまい、大変申し訳ありませんでした」
エルナはそう言うと椅子に座ったまま深々と頭を下げる。
「もうそのことは良いのよ、二人とも無事だったのだから」
ロレーヌはエルナに優しく微笑みかける。
「さぁ、スープが冷めてしまわないうちに頂きましょう」
ロレーヌの促しにリッカとエルナは頷くと、食事を始めた。程なくして着替えを終えたイドラも食堂へ現れる。
「それでは、リッカが作ったという魔道具の話を聞かせてもらおうか」
席に着くなりイドラは開口一番そう言った。その言葉に娘二人は食事の手を止める。
「話を聞いて私が危険だと判断した場合、リッカには二度と魔道具を造ることは許可しない」