新人魔女と過保護な両親(3)
リッカが笑顔でそういうと、エルナは驚いたように目を丸くした。
「でも……」
エルナが困惑した顔で言うのをリッカは小さく首を振って遮る。
「わたしの功績を語って下さいませ。自分で言ってしまっては自慢になってしまいますから。ね、お姉様」
リッカが悪戯っぽく微笑むと、エルナもつられて微笑んだ。
「わかりましたわ。ではお義父様とお義母様にご説明させていただきますね」
リッカの強引な提案にその場にいた全員が少々困惑していたが、それでも何とか場が収まったことに安堵もしていた。
「では、その話は食事の時にでも聞かせてもらおう」
イドラがそう言うと、ロレーヌは目元の涙を拭い「そうね」と応じる。それから二人の娘に向き直ると母親らしく落ち着いた口調で言う。
「二人ともまずは着替えてらっしゃい。話はそれからにしましょう」
ロレーヌの言葉にリッカとエルナは素直に頷くと着替えるために各自の部屋へ向かった。娘たちの背を見送った後、イドラは深くため息を吐く。そんな夫にロレーヌは頭を下げた。
「あなた、ごめんなさい。つい感情的になってしまったわ」
「いや、私も同じ気持ちだよ。特にあんな場面を目の当たりにしたらな。あの子は昔からあまり貴族の型に嵌らない子ではあったが……まさかあそこまで突飛な行動に出るとは思わなかった。あれではいつか本当に命を落としかねん」
イドラの言葉にロレーヌも頷く。
「お転婆が過ぎるのは昔からだけれど、まさかあんな無茶をするなんて」
「そうだな……だが、さっきも言ったがエルナに何かあれば、本当にこの国は滅んでいたかもしれないんだぞ。ある意味、あの子がこの国を救ったんだ。後でエルナを守ったことをしっかりと褒めてやらねば」
イドラの言葉にロレーヌはその複雑な胸中を吐露する。
「でも、自分の功績を説明するとか言っていたではありませんか。褒めたりなどしたら、あの子はますます自分を過信してしまうのではなくて?」
「それは……」
イドラは言葉に詰まる。そんなイドラにロレーヌは続けた。
「リッカは大賢者様の工房へ行くようになってから、さらに危なっかしくなったと思いませんこと? 夜中に屋敷を抜け出したり、危険な魔道具を造ったり……。大賢者様に見込まれているようですけれど……でも、だからと言って今回の行動が許されるわけではないですし、褒めていいものでもないと私は思うのですよ」
「だがな……」
イドラは深いため息と共にそう呟くと天井を仰いだ。