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新人魔女と襲撃者(3)

 新国王は国の跡継ぎとして、幼少のころから国全土に認知されていた。聡明で慈悲深いとその人気は高く、誰もが彼女を支持していた。だが、その後ろに控える人物の事はほとんど知られていない。


「我の即位にあたり、我は皇子リゼラルブの立太子をここに宣言する。()の者は我の弟である。諸般の事情により長らくその存在を秘匿され、王位継承権を持たぬ身であったが、此度の我の即位により、後に続く王位継承者が不在となる。その穴を埋めるべく、我は彼の者の復権を認め、皇太子としてその任に当たらせることとする」


 そう言い放った新国王の言葉に参列者は大きくどよめいた。その場にいた誰もが息を飲み、突然現れた皇太子候補に信じられないとばかりに不躾な視線を向ける中、新国王はニヤリと不敵に微笑むと続けた。


「我の弟の名はリゼラルブ・マグノリア。その存在を確認したことはなくともこの名を耳にしたことがある者はいるだろ。この国の大賢者(ネージュ)その人である。彼の者が皇太子となることに異議ある者は今ここで声を上げよ! さもなくば沈黙をもって応えよ!」


 しばらくの間、沈黙が辺りを包んだ。誰も彼もが口を閉じ息を潜めるように辺りに気を配る。その場を静寂が支配した。


「では、異議なしと判断する」


 新国王はそう宣言すると、皇太子を自分の隣に立たせる。


「我、マリアンヌ・マグノリアは、皇太子リゼラルブと共にこの国に尽くしていくことをここに誓う」


 新国王の凛とした宣言に一瞬の静寂の後、参列者たちは歓声をあげた。その声に答えるように新国王が右手を掲げると、より一層大きな歓声が沸き起こったのだった。


 それと時を同じくして市街地からも歓声が聞こえてきた。その歓声は地鳴りのように長く響き渡り、その音は遠く離れた王宮にさえも届いたほどだった。


 そんな情景を思いだしたリッカがほぅと息をつくと、エルナが心配そうに声をかけてきた。


「リッカさん? どうかなさいましたか?」

「いえ、なんでもありません。昨日の戴冠式のことを少し思い出していたのです。わたし、あのような盛大な式典には初めて参列いたしましたので、民のあの歓声の大きさには驚きました。皆が新しい為政者に喜びと期待を抱いていることがよくわかりました」

「確かにそうですね。(わたくし)もあの地鳴りのような歓声にはとても驚きました」


 エルナはそう言いながらも、どこか不安そうな表情を浮かべている。リッカはその表情を見逃さず、無理もないとその心中を慮る。

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