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新人魔女と皇太子の婚約者(6)

「ですが、皇太子殿下がなぜ大広間などへ?」

「陛下が皆さんをお呼びです。宰相は所用で手が離せないということでしたので、私が代わりに皆さんをお迎えにあがりました」

「そうでしたの。ですが、皇太子殿下自らお越しになるなんて……」

「少しでも早く婚約者の顔が見たかったものですから」

「あら……まぁ……気がお早いこと」


 すました顔でさらりと言ってのけるリゼの言葉に、ロレーヌは扇で口元を隠しながら笑いを堪えた。エルナはそんな二人のやりとりを黙って聞いていた。だが、その耳は真っ赤に染まっている。


「お姉様、お顔が赤いですよ」


 ニヤニヤ顔で指摘するリッカに、エルナはさらに顔を赤くしながら「だって……」とだけ答え、そのまま黙ってしまった。


「エルナさんが美しいのは当然だが、今日の君もなかなかのものだ。馬子にも衣装というやつだな」


 リゼが無頓着に放った言葉は、相変わらず辛辣だ。しかし、リッカにとっては思いもよらなかった言葉だったので、思わず言葉に詰まる。


「えっ?」


 一拍遅れてリッカの耳も赤く染まった。


「まぁ、とはいえ、エルナさんと並ぶとやはり見劣りするがな」


 リッカの動揺など気にも留めず、リゼはそう続けるとエルナに向かって笑いかける。リゼは、エルナを婚約者とすると決めてからその想いをストレートすぎるほど素直に言葉にするようになった。そんな少々重たいともとれる想いの数々をエルナはというと、戸惑いつつも嬉しそうに受け止める。そんな二人が醸し出す雰囲気に当てられるのは、いつもリッカだけだ。


「はいはい。分かっていますよ。花の精のようなお姉様にわたしなんかが叶うわけがありませんよ」

「なるほど。花の精か。時々君は良いことを言う」

「もう。お二人ともお辞めください……」


 リッカとリゼのやりとりに、エルナが恥ずかしそうに割って入る。そんなやりとりをしているうちに、一行は城の奥にある国王の執務室へと到着した。


 新国王のマリアンヌと宰相イドラ・スヴァルトが、一行を出迎える。リッカたちと共にリゼが入室すると、新国王は軽く眉を顰めた。


「まさか、其方がこの者たちを連れてくるとは」

「宰相がお忙しそうだったものですから」

「他の者に行かせればよかろう? 其方は自分の立場を理解しているのか?」

「ええ。もちろん。婚約者として、こちらのエルナ・スヴァルト嬢をお連れしました」


 涼しい顔でそう答えるリゼに国王は眉を片方上げるが、それ以上は何も言わなかった。

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