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新人魔女と皇太子の婚約者(4)

 リッカが王宮に到着した頃には既に多くの貴族たちが城へとやってきていた。そのほとんどは式典の後に行われる舞踏会に参加する者たちだ。


 大広間に集まった人の多さにリッカは圧倒されてしまった。小さな溜息と共に思わず本音が零れる。


「はぁ……気が重い……」


 小さく呟いたつもりだったが、思いの外よく通ったようで周囲の視線がリッカに集まった。慌てて口を紡ぐも時すでに遅く、近くにいた貴族達が興味ありげな視線を送ってくる。近くで談笑を楽しんでいた母からは鋭い視線が飛んできた。リッカはその視線から逃れるように俯くと、なるべく目立たぬように肩をすぼめた。


 「はぁ……」とリッカが再び溜息を漏らしたその時、突然背後から声をかけられた。


「随分と辛気臭い顔をしているな」


 その声に驚いて顔を上げると、そこには見知った顔があった。


「リゼさん……」


 驚きのあまりその場に立ちつくしているリッカに、リゼは相変わらずの仏頂面で問いかける。


「なんだ? そんなに驚いた顔をして」


 まさか今日の主役の一人がこんなところにいるなんて誰が思うだろうか。リッカは驚きのあまり、思わず質問に質問で返してしまう。


「だ、だって……どうしてここに?」


 今日のリゼは燃えるような赤髪を耳の上あたりで鋭角に切りそろえ、バックを刈り上げた髪型をしている。知的にもワイルドにも見えるその髪型が、いつもとは違う魅力を醸し出している。


 また纏っている衣装もリゼの魅力を引き出すのに一役買っていた。体のラインにぴったり沿うタイトなシルエットのベストには、金糸と銀糸を使い刺繍が施されている。金色のボタンは三つ縦に並び、その中央から胸元の赤い石が嵌め込まれたブローチにまでタイが繋がれている。腰には剣を佩いており、そこから赤い紐飾りが伸びていた。そのいでたちはまるで騎士のようで、いつもよりも凛々しく見えた。


 思わず見惚れてしまったリッカの耳に、ざわめく周囲の声が届く。


「まぁ、素敵」

「どちらの御子息かしら」

「ぜひ、お近づきになりたいわ」


 興味と羨望が入り交じったそんな数々の声にリッカはハッと我に返り、慌てて周囲を見渡した。大広間にいる人々が、皆一様にリゼとリッカを見てざわめいている。リゼラルブという王位継承権を持たない皇子の存在は、長く秘匿されてきた。そのため、国民も貴族達も彼の存在を知らない者の方が多い。リゼのことをどこかの子息だろうと勘違いしてささやき合っている者が殆どだった。

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