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新人魔女は、のんびり森で暮らしたい!  作者: 田古 みゆう


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新人魔女の初報酬(8)

 リッカは抱えていた金貨の袋をリゼへ差し出す。そんな弟子の様子を不可解な者でも見るような目で眺めていたリゼは、やがて呆れとも困惑ともつかない溜息をついた。


「まったく君は。素直に受け取っておけば良いものを。本当に馬鹿なのか? それとも何か裏でもあるのか?」


 突然の言葉にリッカは思わずムッとする。


「な、なんですか! その言い方は!」


 憤慨するリッカを気にする様子もなく、リゼは少し鬱陶しそうに手のひらをひらひらと振り、面倒臭そうに答えた。


「もう、いい。分かった。十魔石につき金貨一枚で構わない」


 リッカはその言葉に満足して、袋から金貨を十枚取り出し、残りは袋ごと師匠に返した。リゼは酷く面倒くさそうに金貨の入った袋を受け取ると懐にしまい、それからリッカの横でにこやかに微笑むエルナに視線を向ける。


「エルナさん。騒がしくしてしまい申し訳ありませんでした。明日、王宮でお待ちしておりますね」


 リゼの言葉にエルナはニコリと微笑む。


「ええ。陛下にご納得頂けるかそれが不安ではありますが……」


 最後の方は尻すぼみになり、笑みも弱々しくなる。そんなエルナにリゼは問題ないと太鼓判を押す。


「エルナさん以外、我が妃は有り得ませんので」

「ネージュ様……」


 不安そうなエルナにリゼは優しく微笑む。その笑顔はエルナだけに向けられる特別なものだ。甘い空気が周囲に漂い始めた瞬間、母ロレーヌのわざとらしい咳払いが響いた。


 我に返ったエルナが慌ててリゼに別れの挨拶をする。


「まぁ、私としたことが。お忙しいネージュ様をお引止めしてしまって」

「いえ。私の方こそ……」


 リゼはロレーヌに向き直ると一礼した。


「突然押しかけて思わぬ長居をしてしまい申し訳ありません。では明日、王宮にてお待ちしております」


 颯爽と白馬に跨ったリゼが馬上から思い出したようにリッカを振り返った。


「ああ、そうだ。言い忘れていた」


 リゼの呼びかけにリッカは馬上のリゼを見上げた。


「なんですか?」


 リッカが尋ねると、リゼは少し意地の悪い笑みを浮かべた。


「君は随分と遠慮深いようだから、今月の給料はなしでも文句はないな」

「え?! ちょっと、待ってください! それとこれとは話が別ですよ!」


 リッカが慌てて抗議の声を上げると、珍しくリゼが「ははっ」と声を出して笑った。白馬は屋敷の上空を一度大きく旋回するとそのまま大空を駆けて行った。その姿が遠く小さくなっていくのを見て、リッカは溜息をつき肩を落とした。

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