新人魔女の初報酬(7)
しかしそんなリッカの思いとは裏腹に、リゼは然も当然のように話を続ける。
「仕事をしたのだ。報酬を得るのは当然のことだ」
「いや……でも……」
戸惑うリッカにエルナが優しい笑みをたたえて語りかけた。
「リッカさん。受け取られるのが宜しいと思いますよ」
「お姉様まで……」
義姉の言葉にリッカはさらに困惑する。
「それは、リッカさんの時間を拘束したことと、魔力を消費した分への報酬ですから。リッカさんが受け取らなければ、ネージュ様も納得なさらないはずです」
エルナのその言葉にリゼはその通りだと頷く。
「エルナさんの言う通りだ」
二人の言葉を聞いてリッカは困惑しつつも金貨の入った袋に目線を落とす。袋はずっしりと重い。思わず落としそうになり、慌てて抱え直した。
「本当に……頂いてもよろしいのでしょうか?」
「良いと言っている」
リッカの問いにリゼは簡潔に答える。リッカは腕の中の袋をじっと見つめた。こうして見ると、やはりとんでもない大金だ。恐れ多いという気持ちがリッカの心を占める。しかし、それと同時にリッカはどこかくすぐったい気持ちにもなった。仕事をして報酬を得た。それは、自分が一人前になったと認められたようで、また自分の仕事ぶりを認めてもらえたという証のようで、素直に嬉しいと思った。リッカは顔を上げると、改めてリゼに頭を下げる。
「ありがとうございます」
顔を上げたリッカの笑顔はとても晴れやかで、少し大人びて見えた。
「では、私はこれで失礼する。また明日」
リッカの言葉に、押し問答の終わりをみたリゼはそう言って白馬へ跨ろうとした。それをリッカは慌てて引き止める。
「ああ、待ってください。リゼさん」
その呼びかけにリゼは何事かと訝しげな顔で振り返った。
「……なんだ?」
「あの……このお金なんですが」
「それは先ほど解決したではないか。……まさか足りないなんて言い出す気か」
訝しげに尋ねるリゼにリッカは慌てて首を振った。
「いえ、まさか! その逆です。……やはり頂き過ぎだと思うので……」
話しを蒸し返されているように感じたリゼは少しムッとした表情を浮かべる。その様子を感じ取ったリッカは早口に言葉を続けた。
「あ! いえ、受け取らないと言うことではないのです。ですが全てを受け取るには、やはり多いと思うのです。わたしは大賢者様のお仕事を手伝っただけにすぎないのですから。なので、十魔石につき金貨一枚の報酬を頂くということでどうでしょうか?」