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新人魔女の初報酬(3)

 そこまで言ってエルナは言葉を詰まらせた。そして少しの逡巡の後、意を決したように口を開いた。


「……そんな国王様がご自身のために祈りを捧げる人を疎ましく思うわけがありません」


 きっぱりと言い切る義姉をリッカは驚きの表情で見上げる。


「お姉様は国王様にお会いしたことがあるのですか?」


 エルナは柔らかく微笑むと、遠くを見つめた。


「ええ。一度だけ。現陛下の……マリアンヌ様のお部屋にいらした時に。その時も相変わらず(わたくし)は失敗をしてしまって……。それでも国王様はとても優しく微笑んでくださり、一介の侍女である私に、気にすることはないと気遣うお言葉までくださいましたよ」

「そう……ですか」


 どこか遠い目をして懐かしむように国王について話すエルナに、リッカはただ相槌を打つことしかできなかった。


「それに」


 エルナはリッカの方に向き直ると小さく微笑む。


「そもそもリッカさんが墓所へ行ったのはネージュ様に請われてのことでしょう?」

「……ええ。それはそうですけど」

「でしたら、国王様も歴代の王族の方々も、むしろ喜んでいたかもしれませんよ」

「え? どうしてですか?」


 エルナの言葉にリッカは思わず首をかしげる。そんなリッカにエルナは優しく微笑みかけた。


「ネージュ様はあまりお側に人を置く方ではないでしょう? お一人で行動されることの方が多いくらい。そんな方が、神聖なる墓所へ(とも)を伴ってやってきた。きっとそれだけで、墓所に眠る王族の方々は噂話を始めたんじゃないかしら」

「え?」

「ネージュ様が素晴らしいお弟子さんを連れてきたと」


 エルナの言葉にリッカは目を大きくする。そしてすぐに顔を綻ばせた。


「お姉様……。ありがとうございます」

「いえいえ」


 リッカは窓の外の空を見上げる。その澄んだ青空に小さく手を伸ばす。本当の国王の気持ちなどリッカには到底分かるはずもないが、義姉と話したことで少し気が楽になったような気がした。


「お姉様。一緒に国王様を悼みましょう」


 リッカはエルナにニコリと微笑みかける。二人は並んで空を見上げた。それぞれ手を組み合わせ、静かに目を閉じる。そして二人も街の空気に溶け込み、喪に服した。


 ゆっくりと目を開けたリッカはしばらく空を眺めていたが、不意に何かに気づいたようにエルナの方に向き直ると姿勢を正した。そして深々とお辞儀をする。突然の行動にエルナは面食らったように目を丸くしている。そんな義姉に向かってリッカはニッコリと微笑んだ。

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