新人魔女と薬用スイーツ(7)
「なるほど、では早速……」
三人は匙を口元に運び、パクリと口に含んだ。
「あ……」
「これは……」
「おいしい!」
三人の発した声はそれぞれに違っていたが、その顔を見れば誰しもが満足していることが分かる。三人は互いに顔を見合わせ、ニッコリと笑みを交わした。
「甘すぎず、サッパリとした味ね」
「ええ。それに植物を原材料にしているためか、後味が爽やかですね」
「甘くて美味しいです。スライムみたいなぷるぷるとした食感が癖になります」
三者三様、口々に感想を言い合う。そして再び匙を口に運ぶ。皆今度は先ほどよりも少し多めに口に含んだ。さっぱりとした仄かな甘みと、つるりとした喉越しに時折ほぅと感嘆の息が漏れる。
「確かにこれなら子どもから大人まで美味しく頂けるわ」
ミーナは納得するように深く頷く。その表情を見れば、それがお世辞ではなく本当にそう思っているのだと分かる。
「これで本当にお薬なのかしら。全くと言っていいほど苦くありませんね」
エルナが微笑むと、リッカも満足そうにこくこくと首を振る。
「それにこの食感! 食べる前から子供の興味を引きますよ! 絶対!」
そんなことを言い合っている間に、三人はスイーツをぺロリと平らげてしまった。それぞれの皿にはスイーツを包んでいた薄皮だけが残された。ミーナとエルナが優雅にお茶を飲む側でリッカは「あっという間でしたね」と名残惜しそうに皿を眺めている。
「小さな子でも食べ切れる事を想定して、少し小さめに作られていたのかもしれないわね」
ミーナの言葉にリッカはなるほどと相槌を打つ。しかしその目はまだ物欲しそうに皿に向けられていた。そんなリッカの隣でお茶を飲んでいたエルナは、グラスをコトリと机に置くと思案顔を見せる。
「こちらのスイーツはとても美味しかったのですが、少々気になる点が」
「まぁ、何かしら? 欠点があるならラウルくんにお伝えしなくては」
「欠点とまではいかないのですが、このスイーツは氷精花の薬効を含んでいるのですよね?」
エルナの言葉にミーナもハッとした表情になる。
「ええ、そうね。そうなると、普段は食べない方が良いのかしら?」
エルナとミーナの心配に、リッカは首を横に振る。
「薬効があると言っても、市販のお薬のように強いものではありませんから、健康な人が食べても問題ないと思います」
「そう……それなら良いのだけど。売り出し方についてはもう少し考えた方がいいとラウルくんにお伝えしましょう」