新人魔女と薬用スイーツ(6)
「そうか! 氷精花が溶けた水を使ってこのスイーツを作ったのね」
いつしかリッカの説明に熱心に耳を傾けていたミーナは納得したように手を打った。興奮をしているのか、その瞳はキラキラと輝いている。
「そう言うことです」
リッカはニッと笑う。ミーナは感心したようにうんうんと頷いた。そして、改めて話題のスイーツに目を向ける。
「それじゃあこの不思議なスイーツを考えついたのは、リッカちゃんなの?」
「いえ。水となった氷精花を使うことを思いついたのはお姉様です! わたしは素材についての知識はあっても、お料理に関しては全くなので」
水を向けられたエルナはうっすらと頬を染めて、困ったように笑う。
「私は何も。ただ貴重な素材が活かせないのは勿体ないと思っただけで。良い素材があると提案したのはリッカさんですし、その素材を活かしてスイーツを作り出したのはラウルさんですから」
「そんなことないですよ! わたしがこの素材の話をしたとき、最初はラウルさんの反応、微妙だったじゃないですか。溶けてしまったら使えないのかと、お姉様が仰ったからこそですよ」
エルナとリッカは創作課程の裏話を披露しながら互いを褒め合い始めた。二人の絆を思わせるそんなやり取りをミーナは微笑ましく感じる。
「つまりは、二人ともこのスイーツの開発に関わっているということよね?」
「あ……えっと、はい。そうです。少しですけど」
エルナは恥ずかしそうに頷いた。そんな様子にミーナはクスクスと笑う。
「人のためになることをしたなんて素晴らしいわ」
「いえ、そんな」
「謙遜しなくて良いのですよ。エルナ様。悩んでいる人に寄り添った、それこそが褒められるべきことなのですから」
ミーナに褒められたエルナは益々顔を赤らめる。その隣でリッカの顔にはまんざらでもなさそうな笑みが浮かんでいた。和やかな空気が三人の間に流れる中、ミーナが匙を手に取った。
「じゃあ、スライムの心配も苦みの心配もなくなったところで、そろそろ頂きましょうか」
「はい!」
エルナとリッカもミーナに倣い匙を手に取る。三人はスイーツにそっと匙を差し入れた。すると、くにゅんとした手応えがしてスイーツが簡単に割れると、隙間からとろりとした白いミルクのようなものが流れ出した。
「これは花の中央部分を花弁とは別に溶かしたものらしいですよ。花の蜜でしょうか。これに絡めて食べるのだそうです」
エルナが事前にラウルから聞いていた知識を披露する。