表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
251/461

新人魔女と薬用スイーツ(3)

 リッカは興奮したように、ラウルの店でスイーツを見た時のことを語り出した。ミーナはそんなリッカの話に相槌を打ちながらも視線はテーブルの上のプルンとしたスイーツに釘付けだった。


「それじゃあ、これはスライムに似せてはいるけれど、スライムではないということ?」


 ミーナがそう尋ねると、エルナが口を開いた。


「そのようです。原材料は氷精花だそうです。こちらの薄皮は、その氷精花の茎から採取した繊維から出来ているそうですよ」

「氷精花?」


 さすがは色々なアイテムを取り扱っている雑貨店の店主。氷精花ももちろん知っていた。


「確か、治癒力を高める効果がある花よね。止血剤や鎮静剤なんかの原材料として使われている……」


 リッカが「そう、これです」と言って、いつも肩から下げている鞄から小さなガラス瓶を取り出した。綿帽子のようなふわりとした小さな白い花の周りを、水晶でできているかのような透明に近いブルーの花弁が包み込んでいる花が入っている。


「あら? なかなか原型のまま持ち歩くのは難しい素材だったはずだけど、わざわざ買ってきたの?」

「いえ。これは、先日わたしが採取したものなんですよ」

「先日? 採取? それはいつ頃の話かしら? だって、氷精花はすぐに溶けてしまうでしょ。それを鞄に入れて持ち歩くだなんて……ま、まぁいいわ。その件についても気になるところだけれども、まずはこのスライムについて話を聞きましょう」


 ミーナの表情に一瞬商談者の片鱗が現れたが、今はそれよりも目の前の不可思議なスイーツへの好奇心の方が勝ったようだった。


 エルナは、スイーツ店の店主ラウルがなぜ氷精花をベースにこのスイーツを作ったのかを説明し始めた。


「実は少し前からラウルさんは薬用スイーツが作れないかと考えていたようなんです」

「薬用スイーツ?」

「ええ。ラウルさんのお店に来るお客様の中に、お子様の発熱にお困りの方がみえたそうなのです。その御宅のお子様は体があまり丈夫ではないようで、しばしば発熱するのだとか。それで、お薬を飲ませようとすると、酷く嫌がられてしまうので困っているというお話をお客様からお聞きになって、それからラウルさんは、薬の代わりになるスイーツが作れないかと考えていたそうです」


 エルナの説明にミーナはなるほどと頷く。大人になるにつれ薬を躊躇なく服用できるようになったが、確かにミーナ自身、子どもの頃は薬が苦くて我慢して飲むのが嫌だったことを思い出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ