新人魔女と薬用スイーツ(2)
ミーナは二人に席を勧め、それぞれの前にグラスと皿を丁寧に置いていく。リッカとエルナはミーナにお礼を言うと、早速スイーツを皿の上に置いた。ミーナも二人に倣い試作スイーツを皿に置く。すると、置かれた衝撃でスイーツが生き物のようにプルンと震えた。その様はまるで意思を持っているかのようだ。皿の上のスイーツを見ながらミーナは「やっぱり不思議ね」と呟く。それから、興味津々と言った様子でスイーツと教え子二人を見比べた。
「それじゃあ、コレについて教えてもらえるかしら?」
ミーナの言葉にエルナとリッカは顔を見合わせる。そして、クスッと笑うと頷き合った。
「いいですか、ミーナさん。瞬き厳禁ですよ」
リッカにそう言われミーナはドキッとする。瞬き厳禁とは一体どういうことだろうか。エルナとリッカの二人に見つめられながら、ミーナはゴクリと唾を飲み込んだ。
「わ、分かったわ」
ミーナがそう答えると、リッカはエルナに目配せする。エルナは頷くとミーナの皿の上でプルンプルンと揺れているスイーツを指先でちょんと突いた。するとまるで川の水面のように表面が揺れ動き、その拍子にスイーツから薄い水色の液体が溢れ出した。そうかと思うと、ポンと弾けるようにしてそれは一瞬のうちに終わってしまった。皿の上には、プルンとしたゼリーのような質感から一変し、水饅頭のようにつるりと滑らかな質感へと変化した水色の球体とそこから溢れ出した少量の液体、それから何かが脱皮したような小さな薄皮があった。ミーナは、薄皮を見て思わず声を上げる。
「まあ、一体どういうこと? それに、これは何かしら?」
エルナとリッカが見守る中、ミーナはその不思議な現象に驚きを隠せないでいる。
「ふふ、それはスライムの脱皮した皮です」
ニヤリと笑いながらリッカが説明する。それを聞いたミーナは思わず「ええっ!」と声を上げた。そして「本当に?」と問うように、二人の顔を交互に見る。
「スライムって、あのスライム?」
ミーナが見せたなんとも言えないその表情に、リッカとエルナはコロコロと笑う。
「ミーナ先生、申し訳ございません。今のはリッカさんの冗談です」
「冗談?」
「でも、スライムだって言われたら信じちゃいますよね?」
リッカの悪びれない笑顔に、驚きを隠せないミーナはただ頷く。
「わたしたちも初めてラウルさんに見せてもらった時は、びっくりしましたもん。まさかスライムをスイーツにしちゃうなんてって!」