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新人魔女には少し難しい助言の話(7)

「ええ。それは分かっております。ただ真摯にお慕いしているのでしょう。ネージュ様だけではなく、リッカちゃんやロレーヌ様に対しても実直に思われているのだと存じます」


 エルナは小さく頷いた。そんな彼女をミーナは温かな眼差しで見つめる。自分の思いを表に出し、相手に真っ直ぐに伝えることは簡単なようで難しい。ミーナはエルナに自身の思いが少しでも伝わることを願いながら言葉を紡ぐ。


「ですがその実直な思いは、いつか過度な期待になってしまうかもしれません」


 エルナはハッとした表情を見せた。そして、何か言いたげにミーナを見つめる。ミーナはエルナの次の言葉を待つことにした。エルナは胸の前で手を固く握りしめ、唇をきつく噛み締める。ミーナはエルナを急かすようなことはせずに、彼女が言葉を見つけるまでじっと待つ。エルナは強張った表情のまま沈黙し、時間だけが過ぎていった。


 やがてエルナが震える唇を開いた。エルナの頬は赤く染まっている。彼女の瞳からは我慢しきれなくなったのか、ポロリポロリと涙が溢れ出していた。


「……(わたくし)、そのようなつもりは……。ただ皆様のことが……。ネージュ様のことが」


 嗚咽混じりのエルナの言葉にミーナは「ええ」と頷く。


「皆様のことを尊敬しておりますし……大切に思っております。皆様に……負担を強いるつもりなどございません。……むしろ、私は微力ながら皆様のお役に立ちたいと……」


 エルナはそこで言葉を詰まらせると下を向いた。彼女は今必死に言葉を探しているのだろう。やがてエルナは顔を上げると涙で潤む瞳でミーナを見つめ、か細い声で続けた。


「ミーナ先生は、何故そのようなことを仰るのですか?」


 エルナの問いかけにミーナは優しく微笑みかけると、エルナの両手を自身の手で包み込み、ゆっくりと語りかける。


「エルナ様。各々の力には限界というものがございます。貴女にその気がなくとも、お相手が貴女の真摯なお気持ちを過剰に受け取ってしまわれ、それ故に、本来のお力以上に貴女のために尽力してしまうことがあるやもしれません」


 ミーナはエルナの瞳を見つめた。言葉足らずになってしまい、目の前の少女を必要以上に追い詰めていないか。細心の注意を払いながら言葉を続ける。


「もちろんその逆も然りです。貴女がお相手を思うあまり、ご自身に無理を強いることです」


 ミーナの言葉をエルナは黙って聞いている。その真剣な表情からは何かを感じ取っていることが伺えた。

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