新人魔女と義姉のアルバイト(6)
「お姉様とお揃いですか?」
「ええ。私とお揃いは嫌?」
リッカはブンブンと首を横に振る。すると、エルナは嬉しそうに微笑んだ。エルナの微笑みにリッカも満面の笑みを浮かべる。
「とても嬉しいです! あ……でも、いつご用意されたのですか?」
「私が普段使っている物なので、用意というほどのことではないのですよ。けれど、御給仕をするなら、お洋服を汚さないためにもエプロンをしていた方が良いと思いまして」
エルナの気遣いにリッカは心から感動する。リッカには考えの及ばないことだった。
「ありがとうございます、お姉様」
そんな二人のやりとりを厨房から顔を覗かせたラウルが微笑ましそうに眺めていた。
「二人ともとても可愛いから、きっとお客さんも喜んでくれるよ」
ラウルの言葉に二人は揃って顔を赤くした。
「さて、そろそろ時間だけど、準備はいいかい?」
ラウルの問いかけに二人は元気に返事をした。扉の両サイドに別れて立つと、緊張した面持ちでその時を待つ。ラウルの「それじゃあ、よろしく」という言葉を合図に、二人は店の扉を押し開けた。カランコロンと素朴で耳に優しいドアベルの音色が店内に響いたかと思うと、外で待っていたお客さんの熱量と歓声が一気に店内へ流れ込んでくる。
二人は笑顔でお客さんを出迎えると、店内に招き入れた。それからは大忙しだった。お客さんを席へ案内したり、注文を取ったり、商品を提供したりと忙しなく動き回る。次から次へと注文が入り、その対応に追われる。リッカは慣れない接客に緊張していたが、エルナの落ち着き払った接客を参考に、なんとか失敗せずに対応できていた。
そうしているうちに飲食スペースが満席になった。午前中のピークが過ぎると、飲食はせず商品購入のみというお客さんがちらほらと現れるようになった。リッカが飲食スペースを動き回り、エルナが会計を済ませる。二人は息の合った連携で次々と注文を捌いていった。
昼過ぎになり最後の客を見送った二人はホッと息を吐き、店の扉を閉めた。スイーツ・ミッションでは、昼時に一度閉店する。昼休憩と午後に提供する商品を準備するための時間を確保する為だ。
二人がエプロンを外していると、ラウルが厨房から出てきて二人に向かって労いの言葉をかける。
「二人ともお疲れ様。ベーグルサンドを用意したから一緒にどうだい?」
三人はそれぞれ椅子に座り込み、一息ついた。それからラウルの淹れた薬草茶を飲んで喉の渇きを潤す。