新人魔女の店舗見学(5)
「それで、本日のこれからの予定ですけれど、ミーナ様から午後は店ではなく中央広場の噴水前に来て欲しいとの言伝を受けました」
ロレーヌは午後の予定について話し始めた。
「中央広場ですか? 何があるのでしょうか?」
リッカが首を傾げる。
「詳しくは伺っておりませんが、どうやらミーナ様には何かお考えがある様ですね」
リッカとエルナは二人で首を傾げる。そんな二人を見てロレーヌはクスリと笑った。
「まぁ良いではないですか。行けば分かりますよ」
ロレーヌはそう言って微笑むと、この話はここで打ち切りだとばかりに立ち上がった。娘二人と座学の講師であるミーナの相性の良さにロレーヌは概ね満足し、講義方法については、ミーナに一任し口出しはしないと決めたようだった。
ロレーヌは壁にかけられた時計を確認する。時刻は正午になろうとしていた。リッカとエルナは母の様子につられて時計を見ると、驚いた表情を浮かべた。昼食を摂り、出かける支度をするには思いのほか時間がない。二人は慌てて立ち上がると、使用人に昼食の準備を急かすように声をかける。
午後になり、リッカとエルナは指定された場所へと足を運んだ。そこには既にミーナがいた。どうやら先に来て二人を待っていたらしい。リッカとエルナは早足でミーナの側へと駆け寄る。
「お待たせして申し訳ありません」
リッカがそう言うと、ミーナはニコリと微笑む。
「いいえ、時間通りよ。私が勝手に早く来ていただけだもの」
「ミーナ様、本日もよろしくお願いいたします」
「エルナ様、ごきげんよう。……あら? お加減がよろしくないのかしら?」
ミーナはエルナの顔色を見て心配そうに声をかける。
「いえ、ご心配には及びません」
エルナはそう言って微笑むが、その表情はどこかぎこちない。まだ、午前中のことを引きずっているようだった。リッカもエルナの様子が気にはなっていたが、まずは本日の予定についてミーナに尋ねる事にした。リッカの言葉にミーナは小さく頷くと口を開いた。
「今日は二人に手伝っていただきたいことがあるのです」
「手伝い……ですか?」
リッカとエルナは同時に首を傾げると互いに顔を見合わせた。そんな二人の様子にミーナは微笑む。
「ええ、二人ならきっと上手くやっていただけるわ」
「私達に出来ることならば、もちろんお手伝い致しますが……」
エルナの言葉にミーナは頷く。そして、二人を案内するかの様に歩き出した。二人もそれに続くように歩き出す。