表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
225/461

新人魔女の店舗見学(1)

「では、本日はここまでと致しましょう」


 貴族教育が始まって四日目。舞踏練習開始から二時間半が経過した頃、ようやく老女から終業の合図が出た。今日もまた随分と絞られた気がするとリッカは思う。


「これで本日の舞踏講義を終わります。明日は天曜日になりますので、(わたくし)の講義はお休みです。どうぞゆっくりとお体をお休めくださいませ。それでは失礼致します」


 老女はそう言うと、王宮に仕える講師らしく、丁寧に頭を下げてから部屋を出て行った。講師を見送るため母ロレーヌも後を追って部屋を出ていく。部屋に残されたリッカとエルナは大きなため息をついた。そして、互いに顔を見合わせると、どちらからともなく苦笑を浮かべる。


「今日も厳しかったですね」

「そうね……。それでも、ようやく舞踏の型を教えてくださいましたけれど……」


 二人は揃ってため息をつく。


 実はリッカは、舞踏について一通りの知識を持っていた。もちろんそれは、これまでの貴族教育で身につけたものだ。しかし知識があっても、これまでに舞踏を披露した経験はなく、頻繁に練習をしていたわけでもないため、体は思う様に動かなかった。エルナに至っては、初めての舞踏講義に緊張と不安があり、全くと言っていいほど踊れない。


「こんなこと言ってはダメなのでしょうけれど……(わたくし)、舞踏は苦手かも知れません」


 エルナは不安そうに呟く。リッカはそんなエルナを励ます様に声をかけた。


「大丈夫ですよ、お姉様! きっと上手くなりますから!」


 そうは言ったものの、リッカ自身、言葉とは裏腹に胸中には大きな不安が渦巻いているのだった。


「そろそろお義母様も戻っていらっしゃるでしょうから、談話室へ戻ってお茶に致しましょうか」


 力無い笑みと共にそう提案したエルナにリッカは頷くと、二人は揃ってホールを後にした。


 リッカとエルナが談話室へと戻ると、既に母は二人を待っていた。ロレーヌは戻ってきた二人に声をかける。


「お疲れ様でした。二人とも席に着いてちょうだい」


 リッカとエルナは母に言われるまま席につく。すぐにお茶が出された。リッカは出されたお茶に早速口をつける。緊張と厳しい練習とで喉が随分と乾いていた様だ。カップの中身を一気に飲み干す。いつもならばはしたないと母に咎められるだろうが、今日は何も言われなかった。


 水分補給を終え一息つくと、今度はコクリと一口分を優雅に口に含む。普段はあまり口にしない茶葉の香りがふわりと鼻腔をくすぐった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ