新人魔女と精霊のペンダント(6)
リゼはそこまで言って言葉を切った。その表情はどこか切なげだ。それからしばらくリゼとエルナの押し問答が続いたが、結局折れたのはエルナだった。
「分かりました……。では、リッカ様、お願いできますでしょうか?」
リッカは呆然としながら二人のやり取りを見ていたのだが、エルナの言葉を聞いてハッとする。
「は、はい!……もちろん」
リッカは慌てて返事をした。こうして、なぜかリゼの助手である自分がエルナを送ることになったのだ。
工房を出る時リゼから、本日はエルナを送り届けたらそのまま帰宅して良いという指示があった。街と工房は少し距離があり、往復するにはかなりの時間がかかる。おそらくリゼは気を遣ってくれたのだろう。
リッカはエルナと共に工房を出た。エルナは先程から黙ったまま俯いている。二人の間に沈黙が流れる中、リッカは落ち着かない気持ちでチラチラと横目で彼女を見やる。
どこか物憂げな表情を見せる彼女が気にかかり、リッカは思い切って沈黙を破った。
「あの……エルナさん? リゼさんにまだ何か用事があったのでは?」
リッカの言葉を聞いたエルナは、ハッとしたように顔を上げた。それから再び顔を伏せる。
「いえ……その。……はい。実は。でも、私なんかがネージュ様にご相談するのも……おこがましいと思いまして」
エルナは消え入りそうな声で言った。
「えっ、そんなことないですよ! きっとリゼさんだって話を聞いてくれますよ」
リッカはエルナを元気づけようと、力強く断言した。しかし、エルナは首を横に振る。
「いいえ、それは分かっています。ネージュ様はとてもお優しい方ですし、困っている人は放っておかれないでしょう。ですが……」
そこでまた言葉を切る。顔を上げたエルナの表情はどこか寂しげだった。涙で潤んだ瞳を見て、リッカはギョッとした。
一体どうしたのだろう。自分は何かまずいことを言っただろうか。リッカはオロオロしながらも声をかける。
「エルナさん?」
すると、エルナの目からはポロリと大粒の雫がこぼれ落ちた。
「えっ!? ちょ、ちょっと! どうしたんですか?」
「すみません……。ただ、これからのことを考えてしまって……」
エルナは泣きながら微笑む。そして、ポツリポツリと話し始めた。
「……実は私、忘れ物が多くてですね……仕事をクビになりそうなんです」
「はい?」
突然の話の展開にリッカは首を傾げた。しかし、エルナの頬に伝う涙は止まらない。どうやら切実な話らしい。