新人魔女と楽しい貴族教育(2)
「お嬢様方、お喋りはそのくらいにして、お勉強を始めますよ」
ミーナがそう言いニコリと笑う。リッカとエルナは顔を見合わせると、慌てて返事をした。
三人は、店内を見て回りながら商品について質問したり、生産地や品物の入手方法について説明したりと和気あいあいとした雰囲気で過ごす。リッカもミーナも、サラ・ボニーの座学を受けていた時と比べると、積極性が段違いである。
一通り見て回った後、三人は店の一角に設けられている席についた。リッカとエルナが座って一息ついているところへ、お茶の用意をしたミーナがやって来る。お茶を淹れたカップを二人に渡した後、ミーナは二人の向かいの席に腰掛けた。そして改めて口を開く。
「お邸でのお茶会の様にはいかないかもしれませんが、お茶にいたしましょう」
二人はお礼を言って受け取ると、早速口をつけた。お茶の暖かさに二人はホッと息を吐きながら、落ち着くのを感じた。ミーナは二人の様子を微笑みながら眺め、口を開く。
「さて、では今日はどんなお話をしましょうか」
リッカとエルナは互いに顔を見合わせる。そして先に口を開いたのはリッカだった。
「わたし、先日、あのアップルパイを頂いたのですが、ミーナさんはあれから口にする機会はありましたか?」
「スイート・ミッションのアップルパイ? ええ。大体毎日頂いているわ」
「毎日ですか?」
エルナが驚いた様子で質問する。リッカも少し驚いた表情を浮かべるが、ミーナはそんな二人に笑顔で答える。
「ええ。つわりが酷くて。でも、あの店のアップルパイだけは食べられたものだから、ジャックスが毎日買ってくるのよ。食べられる物があるならって」
ミーナはそう言うとクスクスと笑いながらお腹をさする。その表情は慈しみに溢れており、誰が見ても母親だとわかるものだった。二人の視線に気づいたミーナは恥ずかしそうに笑う。
「ふふ。きっと、この子はりんご好きか甘い物好きに育つわね」
ミーナの言葉に二人は破顔する。そしてエルナが口を開いた。
「私達はその子が生きやすい様に、その子の未来がより良いものになる様、そのためにしっかりと勉強をしなくてはなりませんね」
エルナの言葉にリッカも頷く。そしてエルナはミーナに問いかけた。
「ミーナ先生は、お子様を育てる上でどの様な社会を望まれますか?」
エルナが尋ねると、ミーナは困ったように笑う。
「そうですねぇ……」
そしてほんの少し間を開けてから、少し真面目な顔になる。