新人魔女と新しい家庭教師(7)
「え、ええ。だから、私は構わないと……」
リッカの言葉にミーナは困惑しながら返答する。しかし、リッカはミーナの言葉に首を横に振った。
「いいえ。このままではミーナさんにご迷惑をかけてしまいかねません。ですから、良い方法を思いつきました」
リッカはそう言ってその場にいる全員の顔を順に見る。沈黙がその場を支配するが、やがてロレーヌの大きなため息が沈黙を破った。
「貴女のことだから、また突拍子もない事を言い出すのでしょう。良いかどうかは私が判断します。とりあえず、思いついた事を話してみなさい」
ロレーヌの言葉にリッカは頷くと、口を開いた。
「わたしとお姉様がミーナさんのお店へ行くのです!」
リッカの言葉に三人は互いに顔を見合わせ、小首を傾げる。その反応にリッカは慌てた様子で言葉を続けた。
「あ、あれ? ダメですか?」
リッカの言葉にロレーヌは呆れた様に口を開く。
「……何のためにミーナ様の店へ行くのです?」
「ミーナさんのお店へわたし達が足を運べば、ミーナさんは我が家へ来なくていいではありませんか。お身体への負担もありませんし、店番もできますよ」
リッカは名案だろうという表情だが、ロレーヌは眉をひそめる。そして少し考えると、一つの疑問を口にした。
「貴女は、ミーナ様の店で貴族教育を受けると言っているのですか?」
ロレーヌの質問にリッカは少し困ったように首をひねり答える。
「ええ、貴族の礼儀や知識は、別に我が家の応接室でなくても学べると思うのです」
ロレーヌは眉一つ動かさずにリッカをジッと見つめる。リッカはロレーヌの視線にうろたえつつも、引き下がることはしない。そしてしばらく二人の間に沈黙が訪れる。次に口を開いたのはロレーヌだった。
「それは無理でしょう」
ロレーヌの言葉にリッカはガックリと肩を落とす。しかしすぐに顔を上げると反論する。
「何故ですか? 家に教師を招かなくてはならない決まりなどないはずです」
リッカがそう言うと、ロレーヌは大きなため息を漏らす。
「もちろんそんな決まりはありません」
「だったら……」
反論しようとするリッカの言葉をロレーヌは首を振って遮る。そして、言葉を続けた。
「確かに貴女の言うように、こちらから伺えばミーナ様のお身体への負担は減るかもしれません。ですが、貴女はこうも言いました。『店番もできる』と」
「ええ。お店に居られるのですから、可能ではありませんか」
リッカの答えにロレーヌは首を横に振る。