新人魔女と新しい家庭教師(6)
「でも、わたし達の相手をしている間、お店はどうするのですか?」
リッカも気になり横から質問を投げかける。ミーナは心配顔の二人に笑顔のまま答えた。
「大丈夫よ。この件はジャックスも了解しているから、しばらくの間は彼が店番をするわ」
ミーナの答えを聞いて、代わりになる者がいるのだなとエルナは安心した様子でホッと胸を撫で下ろしたが、その隣でリッカはまだ渋い顔をしていた。
「でも、それだとジャックスさんにもご迷惑がかかるのではありませんか? 確かに、プレースメント・センターの所長さんですし、お仕事のお休みとかは融通が利くのかもしれないですけど」
リッカの言葉にミーナは苦笑する。しかし、リッカの心配ももっともである。今回のことについてジャックスが了解しているとはいえ、どうしても仕事に支障は出てしまう。ジャックス自身は、店の留守を預かるぐらい問題ないと言っていたのだが、リッカはジャックスに申し訳ない気持ちでいっぱいなのだろうとミーナは察した。
リッカが心配そうにしているのを見て、安堵の色を見せていたエルナの表情も再び陰る。そして少し考えてから口を開いた。
「お二人共にお仕事をされているのですね。それではやはりリッカさんが仰るように、お仕事に支障をきたすではありませんか。お義母様、今回のお話はミーナ先生のご負担になってしまうのではありませんか?」
ロレーヌもエルナの意見に同意する様に大きく頷く。
「そうね。私、急いでいたのでミーナ様のご事情も存じ上げず、無理なお願いをしてしまったのかもしれませんね」
ロレーヌがそう言うと、ミーナは慌てた様子で首を横に振った。
「お引き受けすると決めたのは、私ですから、どうぞ、お構いなく……」
ミーナは慌てて口を開く。スヴァルト家の面々が困り顔を見せるので、何か安心させる言葉はないかと考えるが、なかなか思い浮かばない。
室内を困惑の空気が支配する。そんな中、リッカが何かを思いついたように、ポンと手を叩いた。その場にいた皆がリッカに注目する。リッカは良いことを思いついたとばかりに満面の笑顔だった。
しかし、そんなリッカの笑顔にロレーヌは不安な気持ちを抑えきれない。リッカは突拍子もないことを言い出すことが多々あるからだ。そして、その予感はすぐに現実のものとなる。
リッカは、ミーナに向かって口を開いた。
「ミーナさんの体もお店も心配だけど、わたし、先生はミーナさんにやってもらいたいです」