表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
210/461

新人魔女と新しい家庭教師(2)

 リッカが聞いていようがいまいが、お構いなし。自分が正しいと信じて疑わず、毎度高説を垂れる。そして毎回小さな虚栄心をチラつかせるサラに対して、リッカが嫌悪感を募らせていくのにそう時間はかからなかった。


 そしてついにお茶会でそれが限界に達してしまったというわけだ。


(あれで淑女だなんて、冗談だよね? またあんな人が来たらどうしよう……)


 リッカは心の中でそんな事を思う。サラに淑女なんて言葉は似合わなかった。リッカは、隣に立つエルナへ視線を向ける。淑女とはエルナのような人のことを言うのだと、リッカは思った。


 サラもエルナのことは事あるごとに褒めていた。その点だけは、サラの「淑女論」にリッカも同意を示す。貴族教育前にリゼが言っていたことにも頷ける。エルナは、既に貴族教育を受けているかのように完璧な立ち振る舞いをしていた。


 今も、エルナはピンと背筋を伸ばして立っている。その姿は美しいという言葉以上に、気高く尊いものに見える。リッカは改めてエルナを尊敬の眼差しで見つめた。


 おっとりとしていて、いつもふわりとした笑顔を絶やさず、それでいて常に冷静で、周囲への気配りもできる。エルナの周りでは皆が自然と笑顔になる。そしてエルナは、誰に対しても物腰が柔らかく、丁寧に接する。その姿はまさに淑女の見本と言えるだろう。


 リッカがそんなことを考えていると、ロレーヌから声がかかる。


「さぁ、新しい先生がお見えですよ。二人とも、恥ずかしくないようになさいね」


 その声に反応して玄関扉へ目を向ける。スヴァルト邸へ入ってきたその人を見て、リッカは驚きに目を見開いた。


「ミーナさん! どうされたのですか!?」


 思わず大きな声が出る。玄関口に立っていたのは、プレースメント・センターの所長、ジャックス・ランバートの妻ミーナだった。


 ミーナは驚いた顔のリッカに微笑むと、貴族令嬢らしいお辞儀をして見せた。


「ロレーヌ様、お久しぶりにございます。この度は、(わたくし)のような若輩者にお声がけくださり、ありがとうございます。本日より、よろしくお願い致します」


 ロレーヌも美しいお辞儀を返す。エルナもリッカの隣で、頭を深く下げていた。そんな二人とは違い、リッカだけは状況が分からずポカンとした顔をしている。その様子に、ミーナはクスッと笑う。そしてリッカと視線を合わせる。その目は、イタズラっぽく笑っていた。


 リッカが状況を理解できないまま、一行は応接室へと場所を移す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ