表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
208/461

新人魔女の貴族教育(8)

「あまりにも味が似ているので、わたし、驚いてしまいました。まさか先生……」


 リッカの言葉に、サラは苛立たしげに言葉を遮る。


「何を仰りたいのか存じませんけれど、もうそろそろお茶会はお開きにいたしましょう。皆様ちょうど食べ終えたようですし」


 サラはそう言うと、手をパンパンと打ち鳴らす。その音といったら、力任せに叩いたのではないかと思うほどに大きな音だった。スヴァルト家の使用人たちが慌てて部屋に入ってくると、サラは「さっさと片付けてちょうだい」とヒステリックに使用人たちへ命を下す。


 その反応に、リッカは笑い出しそうになるのを必死で耐えながら、サラに声をかけた。


「先生、待ってください。まだ、お店へ行くお約束が出来ていないではありませんか?」


 リッカののんびりとした声に、サラはイライラとした表情を隠そうともせずに振り返る。そして、憎々しげにリッカを睨んだ。事の成り行きを黙って見ていたエルナは何かを察して目を伏せた。


 サラは声を張り上げる。


「貴女とは、参りません!」


 怒りに肩をプルプルと振るわせるサラに、リッカは芝居がかった態度でため息をつく。


「そんな……わたしはあのお店のアップルパイを初めて食べたときから、気に入っているのです。先生が店主とお友達でしたら、是非ご紹介頂きたかったのに……」

「はぁ? なぜ私とスイーツ店の店主が友達だと?」


 サラは理解に苦しむと言った表情を浮かべる。しかしリッカは大真面目な顔で言葉を続けた。


「だって、アップルパイの味があまりにも一緒なので、作り方を教えてもらったと思ったのです。店主が他人にレシピを簡単に教える訳ないですよね……。つまり、店主と先生はレシピを教えても良いくらい、とっても仲が良いということです。ぜひ、ご紹介して頂きたかったのですが……」


 リッカの言葉にサラはポカンと口を開けたかと思うと、突然笑い出す。そして一頻り笑ったところでピタリと笑うのをやめて顔を上げた。


「失礼。そう。(わたくし)はあの店の店主とは旧知の間柄ですわ。ですが、だからと言って、おいそれと貴女をご紹介なんて致しませんわ」

「あら、それはどうしてですか?」


 リッカは可愛らしく小首を傾げる。そしてサラの目をジッと見つめた。その視線に気圧されてサラは怯む。しかし、自らを奮い立たせ、リッカを睨み返した。


「当然ではありませんか。ご紹介をするのは信頼関係があってこそです。私と貴女の間には、そんな物ございませんもの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ